東京地裁が認めなかった原告の主張

主管官庁の裁量 

原告らは,有効性,有用性があるかどうかは科学的,客観的な判断であり,高度の専門的かつ総合的な判断であるとはいっても,判定時における最高の学問水準に照らせば,客観的に定まってくるものであって,判断者の主観に係る裁量になじまない性質のものであると主張するが,有用性の判断は,上記のような比較考量によって行われることにかんがみると,最高水準の知見に照らしても,なお,当該医薬品に有用性があるかどうかが客観的には定まらない場合もあり得ることが想定されるから,その限りで妥当ではない。
なお,原告らは,申請に係る医薬品の有効性,有用性に疑念が残り,有効性,有用性が積極的に肯定できない場合には,厚生労働大臣は,かかる医薬品を承認してはならない義務を負うと主張するが,有用性の判断は,上記のとおり,申請に係る効能,効果に比して著しい有害作用があるため使用価値がないと認められる場合に当たるか否かの判断であるところ,使用価値があると認められない場合には承認してはならないとする趣旨であれば,妥当でない。(II|-3)
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承認基準 

腫瘍縮小効果(奏効率)による承認 

原告らは,奏効率と生存期間中央値との相関関係が認められないことが知られていたとして,Chenらの論文を挙げるが,同論文は,非小細胞肺がんに関するものではなく,Chen自身,考察において,少なくとも進行期小細胞肺がんに関していえることである旨を述べているほか,検討対象とされた第II相試験の数も8試験にすぎないものであり,上記認定を覆すに足りるものとはいえない。
また,原告らは,非小細胞肺がんに対する治療評価は奏効率では適切とはいえず,生存率の向上,QOLの改善が重要であったとして平成11年の福岡正博医師らの論文を挙げるところ,証拠【甲F56】によれば,そこで指摘された問題は必ずしも明瞭ではないものの,一方のレジメンの奏効率が他方より有意に高くても双方の生存期間中央値に有意差を認めなかった比較臨床試験があったことや,有意差はないものの奏効率の高低と生存期間中央値の長短とで逆転関係が見られた比較試験があったこと等を受けてのものと考えられるが,前記基本的事実関係によれば,メタアナリシスは,サンプルサイズを増やすことによって統計学的検出力を高め,論文の結論が一致していない場合にその不確実性を解決することができる性質を有するエビデンスであり,上記の西條長宏医師らのESMO論文が176もの試験を検討対象としていることにも照らすと,福岡正博医師らの論文の指摘は,なお上記認定を覆すに足りるものとはいえないということができる。(III-23-24)
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(1)原告らの主張
原告らは,II相承認のためには,①申請に係る医薬品に関して,第III相試験による有効性の証明までに相当長期間がかかると具体的に見込まれる場合であることが必要であり,②その場合であっても,承認時点において,当該医薬品の有効性を証明できるような第III相試験の迅速な実施が担保されていることもまた必要であり,その確認のため,実施計画書(プロトコール)ないしそれに準じた計画書の事前提出が必要である旨を主張する。
(2)判断
この点,①については,当該個別具体的な抗がん剤について臨床的な利益を直接評価することが実際的であるといえる場合には,当該抗がん剤については,代替工ンドポイントを用いる必要があるとはいえないが,そのことによって,当該抗がん剤についてのみ,有効性を肯定することができなくなるものとはいえないから,①は,当該抗がん剤の有効性を肯定することができるか否かとは関係がなく,承認の違法性とは関係がないというべきである。
また,②についても,当該時点における医学的,薬学的知見の下で,第II相試験までの結果から当該抗がん剤の有効性を肯定することができるか否かと関係がないことは,その内容上明らかであるから,承認の違法性とは関係がないというべきであるし,旧ガイドラインにおいて,承認時までに提出することが求められるとされている試験計画書にどのような内容が含まれるべきか否かについては,旧ガイドライン自体に定めがなく,イレッサ承認当時の医学的,薬学的知見から,承認に際してかかる試験計画書にどのような内容が含まれるべきかが当然に導かれるものということもできないから,市販後臨床試験の計画表示も含む市販後調査基本計画書を提出した被告会社が,旧ガイドラインのいう試験計画書を提出したとはいえないと断ずることもできない。
したがって,原告らの上記主張は,主張自体失当ないし理由がないものというべきである。(III-26-27)
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作用機序解明の必要性 

また,原告らは,作用機序が不明な医薬品の有効性を肯定することはできない旨を主張する。しかしながら,前記基本的事実関係のとおり,殺細胞性抗がん剤のうち,トポイソメラーゼ阻害剤やチューブリン重合阻害剤,代謝措抗剤などについて,その作用機序としての標的分子が明らかとなったのは,近年の分子腫瘍学の進歩の後のことであった。また,証拠【証人吉條長宏,証人坪井正博】によれば,シスプラチン,イリノテカンも,作用機序が不明確なまま,長きにわたって抗がん剤として使用されてきたものである。これらの事実にも照らし,証拠を精査しても,イレッサ承認当時,作用機序が不明な医薬品の有効性を肯定することができなかったものと認めるに至らない。(III-34)
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EAPの扱い 

原告らは,EAPの副作用報告は「実地臨床に近い場を反映させる」資料として極めて重要であり,質が劣るものと解すべきではないと主張するが,EAPの副作用報告が「実地臨床に近い場を反映させる」資料として極めて重要であり,貴重なものであることと,上記のとおり相対的に信用性が低く,したがってデータとしての質が低いものであることとは矛盾するものではなく,その信用性等に応じた評価がされるべきことには変わりないものというべきである。(III-38-39)
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イレッサの有用性 

なお,原告らは,延命効果が確認されていなかったイレッサを販売したこと自体が不法行為であるとも主張するが,イレッサは,承認当時の医学的,薬学的知見に基づき,前記のとおり効能,効果が認められ,効能,効果に比して著しく有害な作用を有し使用価値がないとは認められなかったものであるから,被告会社には,イレッサをおよそ販売しない義務があったとはいえない。(III-176)
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有効性 

原告らは,審査センター判定を前提にすると,IDEAL1の日本人以外の層では最低限の閾値有効率を下回り,IDEAL1の日本人層と日本人以外の層ではPS2症例割合に違いがあり,PS2患者の割合が同程度であれば,日本人層も,日本人以外の層と同程度の奏効率になる可能性もあり,日本人層は高評価できない旨を主張する。しかし,PS2患者の割合がどの程度奏効率に影響するかを明らかにした知見を示す証拠はなく,被告会社が行った解析においても,PS2患者の割合だけでは日本人層と日本人以外の層との間の奏効率の差を説明することができるものとは認められず,日本人層で見られた25.5〜27.3%の奏効率は,PS2患者の割合の差を考慮しても,高いものということができると認められる。(III-34)
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原告らは,イレッサの効能,効果の範囲について,IDEAL試験がセカンドライン以降の患者群に対する単剤投与であったことや,IDEAL試験の適格除外患者基準を無視し,ファーストラインや放射線併用などにも適応を拡大して承認されたものであり,審査センターは,できる限り適応を広げようと主張する被告会社の理由付けをことごとく否定しておきながら,結論としてはそれと全く整合せずに,臨床試験の範囲を超えて適応拡大を肯定したのであって,イレッサの適応について適切な審査など全く行われていなかったものと主張するが,上記認定に照らし,理由がない。(III-36)
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副作用 

原告らは,上記30例のほか,海外からの副作用報告のうち,呼吸器系疾患による死亡例が22例あったものとも主張するが,これらも間質性肺炎の副作用症例であったと主張するものではない。(III-133)
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原告らは,イレッサ承認当時,イレッサのEGFR−TKIというドラッグデザインから,間質性肺炎を引き起こすことが予見可能であった旨主張するが,現在の知見においても不明であることがイレッサ承認当時に分かっていたものとは認められず,予見可能性があったということもできない。(III-134)
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原告らは,イレッサ承認前の非臨床試験の結果,イレッサによる肺毒性を予見することができたものと主張するが,その主張は主として,イレッサのドラッグデザインによれば,イレッサが間質性肺炎を引き起こすことが予見可能であったとの上記1の主張を前提にするものであるところ,このような主張に理由がないことは上記1のとおりである。また,前記基本的事実関係並びに証拠【丙B9の1〜丙B14,丙B16〜19】及び弁論の全趣旨によれば,動物実験については,病理検査所見の質を高めるため,主として獣医師出身者からなる病理検査担当者の専門性を確保する制度が整えられており,また,外国では専門家によるピアレビュー(Peer Review,査読)がされるようになっており,イレッサの非臨床試験では,GLPに準拠して行われ専門家によるピアレビューがされた結果,イレッサの非臨床試験では,イレッサに起因する肺の毒性所見は認められなかったと考えられたものと認められるところ,原告らの非臨床試験の結果の解釈に関する主張は,獣医師の資格も有しない演六郎医師の意見によるものにすぎず,容易に採用することができない。
なお,原告らは,イレッサの非臨床試験において,イレッサ群のみに肺胞マクロファージの浸潤が高頻度に見られたことや,肺胞中隔化生が見られた動物があったことなどがイレッサによる肺毒性を予見させるものであった旨主張するが,証拠【丙F39の1,丙F40の1,丙F41の1,丙F42の1】によれば,それらは,被験動物に自然発生的に見られるものであって,原告らが主張する肺胞マクロファージの浸潤や肺胞中隔化生は,イレッサによる肺毒性を予見させるものということはできないものと認められる。なお,これらの所見は,現在知られているイレッサの間質性肺炎の所見とも整合しない【証人工藤翔二】。(III-135-136)
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原告らは,イレッサの国内臨床試験,国外臨床試験及びEAPの副作用報告のうち,39例が急性肺障害・間質性肺炎の副作用症例であり,このうち被告国が本件添付文書に反映しなかった30症例の少なくとも10例は明らかに間質性肺炎の副作用症例と認められるものであった(いわゆる「典型10例」)とし,治験の2例を除く37症例中,死亡例は24例あり,発症例の死亡率は64.9%にのぼり,イレッサによる間質性肺炎が極めて重篤かつ致死的な副作用であることは明らかであったものと主張するが,承認前の副作用報告及び厚生労働大臣が把握すべきであったEAP症例については,上記認定のとおりであり,原告らの主張は前提を欠くものである。(III-138)
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発症頻度の記載 

原告らは,医療現場には,できるだけ具体的に,幅広く情報が伝えられる必要があり,特に,イレッサが世界初の作用機序も解明されていない新薬であり,未知の要素が多く情報が乏しいことにかんがみれば,承認用量外やEAPにおける間質性肺炎の発症率を具体的に医療現場に知らせる必要があったものであり,「頻度不明」等と記載したことは,実効性のある注意喚起としては不十分であったと主張する。
しかしながら,前記基本的事実関係及び証拠【乙L16,証人西條長宏】によれば,イレッサの国内臨床試験において,承認用量である250mgでの間質性肺炎の発症例は認められなかったところ,抗がん剤の投与量は,化学療法の副作用の発現頻度を左右する因子として挙げられており(第1章第1節第1款第1の1(1)ウ),500mg投与群も含めた国内臨床試験133例において,500mg投与群で3例の間質性肺炎の副作用症例があった旨を記載すれば,常用量でない500mgを使ってもいいかもしれないというふうに受け取られたり,他の毒性についても合わせて500mg投与群の記載もするとすれば,500mg投与群の方が毒性が強く,頻度も高かった旨が記載されることになり,250mgで用いることに安心感を与えるおそれもあった。
また,本件記載要領によれば,「「使用上の注意」に記載すべき内容は,原則として当該医薬品が承認された効能又は効果,用法及び用量の範囲で用いられる場合に必要とされる事項とする。」とされ,記載に当たっては,データがないか,あるいは不十分な場合には,その記載が数量的でなく包括的な記載であっても差し支えないとされ,既に記載している注意事項の削除又は変更は,十分な根拠に基づいて行うこととされ,副作用の発現頻度については,調査症例数が明確な調査結果に基づいて記載することとされていた(第1章第2節第1の3(1)イ(ア))。
以上によれば,承認用量である250mg投与による間質性肺炎の発症頻度については,上記の定めの趣旨に照らして十分な根拠となる具体的なデータがあったとはいえず,500mg投与群を含めた頻度を記載することにより,誤った受け取られ方がされる可能性もあったのであるから,「頻度不明」との記載をすることが不適切な記載であったとはいえない。(III-154-155)
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原告らは,医療現場には,できるだけ具体的に,幅広く情報が伝えられる必要があり,特に,イレッサが世界初の作用機序も解明されていない新薬であり,未知の要素が多く情報が乏しいことにかんがみれば,承認用量外やEAPにおける間質性肺炎の発症率を具体的に医療現場に知らせる必要があったものであり,「頻度不明」等と記載したことは,実効性のある注意喚起としては不十分であったと主張する。
しかしながら,前記第2章第2節第3款第2の1(1)のとおり,承認用量である250mg投与による間質性肺炎の発症頻度については,上記の定めの趣旨に照らして十分な根拠となる具体的なデータがあったとはいえず,500mg投与群を含めた頻度を記載することにより,誤った受け取られ方がされる可能性もあったのであるから,「頻度不明」との記載をすることが不適切な記載であったとはいえない。(III-169-170)
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早期発見,早期治療のための対処法 

原告らは,イレッサの間質性肺炎については,イレッサ承認当時,副作用の発現機序,発生までの期間,具体的防止策,処置方法や,初期症状があり,その症状が認められた時点で投与を中止する等の処置をとることにより症状の進展が防止できることが判明していたものであり,間質性肺炎は,早期診断と迅速な治療が予後を左右することが知られており,イレッサは,経口薬で,通院治療が可能とされていたから,間質性肺炎の予後を左右する早期診断と迅速な治療を可能にする初期症状の記載をして,患者指導を含めた注意喚起をする必要があったと主張する。
しかしながら,前記第1の1(2)のとおり,医療用医薬品のように医師等が使用することが予定されているものについては,これを使用することが予定された医師等の知識,経験等を前提として,当該医師等が添付文書に記載された使用上の注意事項の内容を理解できる程度に記載されていれば足りるところ,イレッサは医療用医薬品に認定されており,(前記第1章第1節第1の1(11)),イレッサによる間質性肺炎について,承認当時のエビデンスでは,早期(急性)に発症したものの予後が悪いことなどを予見することはできなかったものであるから,イレッサによる間質性肺炎の一般の薬剤性間質性肺炎とは異なる初期症状や,早期治療の必要性が明らかであったとは認められない。
したがって,イレッサについて,前記第1の7のとおり,致死的となる可能性があることを記載する必要があったといえるほか,さらに,一般に知られている間質性肺炎の初期症状等,早期発見,早期治療の対処法を記載する必要があったとは認められない。(III-156)
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原告らは,上記の厚生省薬務局長通知を援用し,イレッサの間質性肺炎については,イレッサ承認当時,副作用の発現機序,発生までの期間,具体的防止策,処置方法や,初期症状があり,その症状が認められた時点で投与を中止する等の処置をとることにより症状の進展が防止できることが判明していたものであり,間質性肺炎は,早期診断と迅速な治療が予後を左右することが知られており,イレッサは,経口薬で,通院治療が可能とされていたから,間質性肺炎の予後を左右する早期診断と迅速な治療を可能にする初期症状の記載をして,患者指導を含めた注意喚起をする必要があったと主張する。
しかしながら,前記第2章第2節第3款第2の1(2)のとおり,イレッサについて,致死的となる可能性があることを記載する必要があったといえるほか,さらに,一般に知られている間質性肺炎の初期症状等,早期発見,早期治療の対処法を記載する必要があったとは認められない。(III-170)
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肺線維症合併例への慎重投与 

原告らは,イレッサの承認以前において,薬剤性間質性肺炎に関して,肺線維症,間質性肺炎の合併ないし既往は注意すべき要素とされていたこと,新規抗がん剤の添付文書の多くで,間質性肺炎又は肺線維症のある患者については症状を増悪させ致命的となり得る旨の禁忌欄,慎重投与欄等における注意喚起がされていたことに加え,永井実験の結果,イレッサを肺線維症の患者に投与するときには有害作用が起きる可能性が高くなることを否定できないという知見があったこと,イレッサ投与開始から13日後に間質性肺炎の増悪により呼吸困難に陥り,死亡したとのEAPの副作用症例(丙B3の115)が存在したことなどから,肺線維症患者へのイレッサ投与が致死的な間質性肺炎のリスクとなることについて,十分な注意喚起が必要であったと主張する。
しかしながら,医療用医薬品のように医師等が使用することが予定されているものについては,これを使用することが予定された医師等の知識,経験等を前提として,当該医師等が添付文書に記載された使用上の注意事項の内容を理解できる程度に記載されていれば足り,イレッサが医療用医薬品に認定されていることは,上記(2)のとおりであり,薬剤性間質性肺炎に関して,肺線維症,間質性肺炎の合併ないし既往は注意すべき要素とされていたこと,新規抗がん剤の添付文書の多くで,間質性肺炎又は肺線維症のある患者については症状を増悪させ致命的となり得る旨の禁忌欄,慎重投与欄等における注意喚起がされていたことは,更に本件添付文書にも記載すべきとする根拠にはならない。
また,原告らが既存の間質性肺炎の増悪例であると主張する丙B3の115の症例は,前記第2節第2款第4の2(1)ウ(イ)のとおり,既存の間質性肺炎の増悪例である可能性が高いが,合併症,既往歴である旨の情報が存在しないため,既存の間質性肺炎の増悪例であることが明らかであるとはいえず,他に,既存の肺線維症等がイレッサの副作用として増悪した旨の症例は,臨床試験,EAPいずれからも認められない。
そして,原告らが上記主張の根拠とする永井実験は,被告国が平成14年7月以前に把握しておらず,把握すべき端緒があったとも認められないから,永井実験の結果を被告国が規制権限を行使すべき根拠とする主張は,主張自体失当である。
したがって,イレッサによる間質性肺炎について,被告国が把握し又は把握すべきであった承認当時のエビデンスでは,肺線維症合併例が発症危険因子ないし予後因子であることなどを予見することはできなかったものであるから,本件添付文書に,肺線維症合併例への慎重投与等を記載する必要があったとはいえない。(III-156-158)
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原告らは,イレッサの承認以前において,薬剤性間質性肺炎に関して,肺線維症,間質性肺炎の合併ないし既往は注意すべき要素とされていたこと,新規抗がん剤の添付文書の多くで,間質性肺炎又は肺線維症のある患者については症状を増悪させ致命的となり得る旨の禁忌欄,慎重投与欄等における注意喚起がされていたことに加え,永井実験の結果,イレッサを肺線維症の患者に投与するときには有害作用が起きる可能性が高くなることを否定できないという知見があったこと,イレッサ投与開始から13日後に間質性肺炎の増悪により呼吸困難に陥り,死亡したとのEAPの副作用症例(丙B3の115)が存在したことなどから,肺線維症患者へのイレッサ投与が致死的な間質性肺炎のリスクとなることについて,十分な注意喚起が必要であったと主張する。
しかしながら,前記第2章第2節第3款第2の1(3)のとおり,医療用医薬品のように医師等が使用することが予定されているものについては,これを使用することが予定された医師等の知識,経験等を前提として,当該医師等が添付文書に記載された使用上の注意事項の内容を理解できる程度に記載されていれば足り,イレッサは,医療用医薬品に認定されているから,薬剤性間質性肺炎に関して,肺線維症,間質性肺炎の合併ないし既往は注意すべき要素とされていたこと,新規抗がん剤の添付文書の多くで,間質性肺炎又は肺線維症のある患者については症状を増悪させ致命的となり得る旨の禁忌欄,慎重投与欄等における注意喚起がされていたことは,更に本件添付文書にも記載すべきとする根拠にはならない。
また,原告らが既存の間質性肺炎の増悪例であると主張する丙丙B3の115の症例は,前記第2章第2節第2款第4の2(1)ウ(イ)のとおり,既存の間質性肺炎の増悪例である可能性が高いが,合併症,既往歴である旨の情報が存在しないため,既存の間質性肺炎の増悪例であることが明らかであるとはいえず,他に,既存の肺線維症等がイレッサの副作用として増悪した旨の症例は,臨床試験,EAPいずれからも認められない。
加えて,前記基本的事実関係(第1章第1節第2款第5の4(1)),前記第2節第2款第7の1のとおり,永井実験は,ヒトと種差のあるマウスを使った動物実験であり,ヒトヘの外挿可能性にはそもそも限界があると認められる。また,永井実験は,ブレオマイシンによる急性の肺線維症に対するEGFR−TKIの効果を見たものであり,慢性の肺線維症に対する効果を見たものとは必ずしも解されず,金属による肺線維症モデルを用いたものではあるが,EGFR−TKIにつき永井実験と相反する結果を示すRiceらの実験が既に存在していた。さらに,永井実験では,ヒトヘの投与量よりはるかに多い量が用いられていたところ,動物実験の外挿の必須条件とされる用量反応相関を見ていないものであった。これらの事情に照らすと永井実験は,ヒトの肺線維症合併例に対するイレッサの影響を見たものとして依拠すべき知見であるということはできなかったものと認められる。
なお,前記基本的事実関係(前記第1章第3節第2の2)によれば,イレッサ承認後,本件添付文書の第6版には,「警告」欄及び「慎重投与」欄に,特発性肺線維症,間質性肺炎等の合併は死亡につながる重要な危険因子であり,イレッサの投与開始に当たり,これらの合併の有無を確認し,これを有する患者に使用する場合には特に注意すべき旨が記載されたが,証拠【証人工藤翔二】によれば,これらの記載は,永井実験の内容のとおりというわけではなく,専門家会議によって得られた知見が重要であったものと認められる。
したがって,イレッサによる間質性肺炎について,承認当時のエビデンスでは,肺線維症合併例が発症危険因子ないし予後因子であることなどを予見することはできなかったものであるから,本件添付文書第1版に,肺線維症合併例への慎重投与等を記載する必要があったとはいえない。(III-170-172)
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延命効果等の記載 

原告らは,イレッサが世界初の承認であり,その作用機序も解明されておらず,II相承認であって延命効果の証明もされていない一方,致死的な間質性肺炎の発症が認められていたにもかかわらず,医療現場や患者には,副作用の少ない抗がん剤という認識が広まっていたのであるから,有効性・安全性についての十分な説明と同意が欠かせない状況にあったとして,本件添付文書に,延命効果の証明がないことも含めて,有効性,安全性についての十分な説明をして同意を得るべき旨を明記すべきであったと主張する。
しかしながら,イレッサは,上記(3)のとおり,医師等が使用することが予定されている医療用医薬品に認定されており,医師は,診療契約上の義務として,患者に対し治療方針等の説明義務を負担しているから(最高裁平成10年(オ)第1046号同14年9月24日第三小法廷判決・裁判集民207号175頁参照),前記第1の7のとおり,イレッサの間質性肺炎が致死的となる可能性がある旨を記載していたとすれば,医師が,イレッサを使用するに当たって,イレッサの間質性肺炎が致死的となる可能性のある副作用であることを十分に認識し,患者に対し,これを説明することを期待することができたものということができ,重ねて,添付文書において,十分な説明をして同意を得るべき旨を明記すべきであったとはいえない。
また,イレッサは,第II相試験までの成績に基づいて承認されたものであり,本件添付文書第1版の臨床成績の欄にも第II相試験までの成績しか記載がなかったものであるから(前記第1章第2節第2の1(12)コ参照),いまだ第III相試験による延命効果の証明がないことは医師であれば当然に認識することができ,他のII相承認された新規抗がん剤について,延命効果の証明がないことが添付文書に記載されている例も証拠上認められないから,添付文書において,そのような記載をする必要があったとはいえない。(III-158-159)
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原告らは,イレッサが世界初の承認であり,その作用機序も解明されておらず,II相承認であって延命効果の証明もされていない一方,致死的な間質性肺炎の発症が認められていたにもかかわらず,医療現場や患者には,副作用の少ない抗がん剤という認識が広まっていたのであるから,有効性・安全性についての十分な説明と同意が欠かせない状況にあったとして,本件添付文書第1版に,延命効果の証明がないことも含めて,有効性,安全性についての十分な説明をして同意を得るべき旨を明記すべきであったと主張する。
しかしながら,前記第2章第2節第3款第2の1(4)のとおり,イレッサの間質性肺炎が致死的となる可能性がある旨を記載していたとすれば,医師が,イレッサを使用するに当たって,イレッサの間質性肺炎が致死的となる可能性のある副作用であることを十分に認識し,患者に対し,これを説明することを期待することができたものということができ,重ねて,添付文書において,十分な説明をして同意を得るべき旨を明記すべきであったとはいえないし,有効性について,延命効果の証明がないことを記載する必要があったとはいえない。
なお,証拠【甲個①5】によれば,被告会社が作成して医療施設に提供し,○○○に対する説明に用いられたものと認められる「薬価収載(保険適用)にまだなっていない新しいお薬の使用に関する同意書」には,効果が見られない場合や効かなくなる場合がある旨,延命効果があるかどうか分かっていない旨が記載されており,このような説明はされていたものと認められる。(III-172-173)
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投与制限 

なお,原告らは,イレッサの有効性及び安全性が確認されていないとして,第II相試験の選択基準,除外基準(新たに脳内転移が診断された患者等)に照らしてその対象患者となり得ない患者に対する投与禁止等の記載をする必要があったと主張する。イレッサについては,日本肺癌学会により承認後の平成15年10月に出されたゲフィチニブに関する声明【甲L51】や,同学会により平成17年3月15日に作成されたゲフィチニブ使用に関するガイドライン【甲L6】において,実地医療でのイレッサ投与症例の選択基準として,IDEAL1試験の主要な選択基準・除外基準を参考とすること,その他我が国で安全に実施された医師主導の臨床試験の症例選択・除外基準も参考とすること,これら以外の症例への投与は安全性の検討が行われていないことから,現時点では臨床試験以外では原則的に投与すべきでないこと等が記載されているが,これらは,イレッサの承認後,承認当時は予測できなかったイレッサの間質性肺炎の発症頻度や重篤性が次第に明らかにされてきた段階で出されたものであり,イレッサ承認当時,一般的に,治験の選択基準,除外基準に照らして治験の対象患者となり得ない患者について,投与を禁止すべきとの医学的,薬学的知見があったとは認められない。(III-159)
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前記第2章第2節第3款第2の1(5)のとおり,本件患者らには,イレッサと他の抗がん剤との併用療法を受けた者も,胸部への放射線療法との併用療法を受けた者もいなかったものであるから,添付文書にこれらの記載をする必要があった旨の原告らの主張は,その前提を欠き,主張自体失当である。
なお,原告らは,イレッサの有効性及び安全性が確認されていないとして,第II相試験の選択基準,除外基準(新たに脳内転移が診断された患者等)に照らしてその対象患者となり得ない患者に対する投与禁止等の記載をする必要があったと主張するが,前記第2章第2節第3款第2の1(5)のとおり,イレッサ承認当時,一般的に,治験の選択基準,除外基準に照らして治験の対象患者となり得ない患者について,投与を禁止すべきとの医学的,薬学的知見があったとは認められない。(III-173)
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入院の指示・医療機関限定 

原告らは,間質性肺炎が早期の適切な対処を必要とすることに照らし,このような注意喚起も本件添付文書第1版に記載すべきであったと主張する。
しかしながら,イレッサによる間質性肺炎について,承認当時のエビデンスでは,早期(急性)に発症したものの予後が悪いことなどを予見することができなかったものであることは上記(2)のとおりであり,前記基本的事実関係(前記第1章第2款第4の1(2))及び証拠【丙F14〜29】によれば,薬剤性間質性肺炎一般の対処法については,教科書等にも記載された知見であったから,イレッサ承認当時,イレッサについて,本件添付文書第4版に記載されたような入院等の下における管理の指示や,使用:医師・医療機関の限定が必要であったとは認められない(前記第1章第3節第2の1参照)。(III-159-160)
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原告らは,間質性肺炎が早期の適切な対処を必要とすることに照らし,イレッサについて,入院の指示,使用可能な医師や医療機関の限定をするよう指示すべきであったと主張する。
しかし,イレッサ承認当時,イレッサについて,本件添付文書第4版に記載されたような入院等の下における管理の指示や,使用医師・医療機関の限定が必要であったとは認められないことは,前記1(6)のとおりである。(III-160)
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原告らは,間質性肺炎が早期の適切な対処を必要とすることに照らし,このような注意喚起も本件添付文書第1版に記載すべきであったと主張するが,前記第2章第2節第3款第2の1(6)のとおり,イレッサ承認当時,イレッサについて,本件添付文書第4版に記載されたような入院等の下における管理の指示や,使用医師・医療機関の限定が必要であったとは認められない。(III-173)
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原告らは,間質性肺炎が早期の適切な対処を必要とすることに照らし,イレッサについて,入院の指示,使用可能な医師や医療機関の限定をするよう指示すべきであったと主張する。
しかし,イレッサ承認当時,イレッサについて,本件添付文書第4版に記載されたような入院等の下における管理の指示や,使用医師・医療機関の限定が必要であったとは認められないことは,前記第2の2(8)のとおりである。(III-174-175)
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製薬企業が,添付文書等による指示・警告以外にも,当時の医学的,薬学的知見の下で,副作用による被害の発生を防止するため必要な安全性確保のための措置を採る義務を負うことがないとはいえない。
しかしながら,前記第1節第2の3のとおり,イレッサ承認当時においては,使用可能な医師や医療機関を限定することや,全例登録調査をすることが必要であったと認めることはできず,被告会社において,原告らの主張するこれらの販売上の指示をすべき義務があったとはいえない。(III-176-177)
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全例登録調査 

ア 原告らは,使用成績調査は主として安全性に焦点をあてた調査であり,その目的は,まずもって新医薬品の安全性の確保にあるとし,とりわけ全例登録方式によれば,何らかのシグナルがあったときに即座に適切な対応を採ることができるから,全例調査の目的は安全性確保にある(ただし,再審査の申請書の添付資料の基礎として,医薬品の有用性を確認する目的を有することと排他的でない。)と主張する。
そして,毒性が強いことが懸念されたり,海外での知見はあるものの国内での知見が必ずしも多くなく,日本人に対する有効性・安全性を直ちには外挿できず,未知の副作用等の発現の可能性がある場合などに,全例登録調査が行われており,厚生労働省の平山佳伸安全対策課長(当時)の説明によれば,全例調査をかける医薬品の種類というのが大体どのようなケースであるかについて,以下の2つのケースであるという説明をしているとする。
すなわち,平山佳伸安全対策課長は,①承認の前提となった臨床試験データが基本的に海外のものであって,日本人のデータが少ない場合に,日本人のデータを早期に収集するために実施する,又は②使用方法が難しい場合,細胞毒性が強い場合,重篤な副作用が予測される場合に副作用情報を早期に収集するために実施するとの説明をしているとする。
さらに,原告らは,全例登録調査は,(あ)早期に適正使用情報が医療機関に提供され,(い)専門家による慎重な使用を確保することができ,(う)実際に副作用の低減につながると主張して,①イレッサの承認前の臨床試験における日本人のデータは,同じ抗がん剤で全例登録調査がされたイリノテカン(415例)やS−1(578例)に比べて少ないこと(133例),②重篤な間質性肺炎の発症が予見され,世界初の承認であって,先行する海外での知見もなかったこと,③1日1錠の経口薬・で毎日服用するため,間質性肺炎が起こったときにイレッサの血中濃度がピークとなっており,非常に危険であること,④国内治験では死亡例はないが,海外で死亡例が確認された医薬品について全例登録調査が実施された例(A型ボツリヌス毒素製剤・ボトックス注100)があり,イレッサも同様であることなどから,イレッサについても,間質性肺炎の副作用に対する安全性確保措置として,全例登録調査を実施すべきであったと主張する。
イ しかしながら,イレッサによる間質性肺炎について,承認当時のエビデンスでは,早期(急性)に発症したものの予後が悪いことなどを予見することができなかったものであることは前記1(2)のとおりであり,イレッサによる間質性肺炎は,他の抗がん剤と同程度の頻度,重篤度で発症し,致死的となる可能性があると評価することができたにすぎない。
また,前記基本的事実関係によれば,厚生労働大臣は,イレッサについて,劇薬,要指示医薬品の指定及び医療用医薬品の認定をしたほか,被告会社に対し,市販直後調査を実施することを承認条件としたものであるところ,市販直後調査は,販売開始直後の6か月間において,医療機関に対し確実な情報提供,注意喚起等を行い,適正使用に関する理解を促すとともに,重篤な副作用及び感染症の情報を迅速に収集し,必要な安全対策を実施し,予測できない重篤な副作用症例,感染症症例,その他の重篤な副作用等の被害を最小限にすることを主な目的とし,運用上,輸入販売業者等の医薬情報担当者(MR)が,販売開始直後の6か月間,当該医薬品を納入した医療機関に対し,納入前及び納入後(納入後2か月間はおおむね2週間に1回,その後はおおむね1か月に1回程度)にその慎重な使用を繰り返し促し,重篤な副作用等が発生した場合,速やかに詳細情報の入手に努め,副作用症例の報告を行い,必要な安全対策を講じること等とされるものである(前記第1章第2節第1の2(3)イ,第2の1(3),(6),(11)参照)。すなわち,厚生労働大臣は,医薬品の安全性確保を目的とする市販直後調査を,イレッサの承認条件としたものである。
また,原告らは,全例登録調査が実際に副作用リスクの低減につながると主張し,イリノテカンによる副作用死亡率が治験時から市販後で5分の1に減少した例を挙げるが,このような副作用死亡率の低下が,必ずしも全例登録調査を実施したことにより生じたものであることが十分に立証されているとはいい難い。
そうすると,前記のとおり,イレッサの間質性肺炎が致死的となる可能性があるという意味で重篤な副作用であったとしても,その旨を本件添付文書第1版に記載し,更に市販直後調査を実施する場合に,更に全例登録調査をすることが必要であったということはできない。(III-160-162)
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ア 原告らは,イレッサについて,間質性肺炎の副作用に対する安全性確保措置として,全例登録調査を実施すべきであったと主張する。
イ しかしながら,イレッサの間質性肺炎が致死的となる可能性があるという意味で重篤な副作用であったとしても,その旨を本件添付文書第1版に記載し,更に市販直後調査を実施する場合に,更に全例登録調査をすることが必要であったということはできない(前記第2章第2節第3款第2の2(2)参照)。(III-175)
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製薬企業が,添付文書等による指示・警告以外にも,当時の医学的,薬学的知見の下で,副作用による被害の発生を防止するため必要な安全性確保のための措置を採る義務を負うことがないとはいえない。
しかしながら,前記第1節第2の3のとおり,イレッサ承認当時においては,使用可能な医師や医療機関を限定することや,全例登録調査をすることが必要であったと認めることはできず,被告会社において,原告らの主張するこれらの販売上の指示をすべき義務があったとはいえない。(III-176-177)
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適応限定 

(4)なお,原告らは,適応の設定は厳格に判断されるべきであり,臨床試験の適格条件を越えた患者において被害が発生した場合には,報償責任,危険責任をもとに消費者保護を目的とする製造物責任の理論から考えても,製薬企業が責任を負うべきであり,設計上の欠陥が認められなければならないとして,適応の設定は設計上の欠陥の問題である旨主張するが,設計上の欠陥は,上記のとおり,副作用による有害性が著しく,その医薬品の有効性を考慮してもなお使用価値がないと認められるか否かに係るものであり,製造業者等が,当該医薬品が投与された時点で,当該医薬品の有用性が認められる範囲に適応を限定したか否かは,指示・警告上の欠陥の有無の判断要素となるにとどまるものというべきである。(III-167)
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広告 

原告らは,被告会社が,①マスコミ等に向けたプレスリリース,②医療関係者に向けたパンフレットや小冊子の発行,医学雑誌への広告記事の掲載,③医療関係者やがん患者に対する同意文書や説明文書の発行及びホームページにおける積極的な情報提供を行い,イレッサについて,非小細胞肺がんに対する画期的な分子標的薬であると位置付け,イレッサによる副作用が軽く安全性が高いことを強調する虚偽・誇大な広告宣伝を行っていたとし,広告宣伝の持つ,いまだ当該医薬品を使用していない医師や患者らに対する多大な影響力にかんがみると,殊に消費袁の生命,身体の安全に直結する医薬品においては,虚偽,誇大な広告宣伝は,製造物責任法上の「欠陥」に該当すると主張する。そして,このような考え方は,メーカーが製品の品質,性能などについてカタログなどの広告に記述した内容を消費者に対する「明示の保証」として,その内容に基づいてメーカーに責任を負わせる理論によって裏付けられると主張する。
しかしながら,イレッサは要指示医薬品に指定され,医療用医薬品に認定されており(前記第1章第2節第2の1(11)),医師等の処方によってしか使用されず,医師は,医療用医薬品を使用するに当たって,医薬品添付文書の記載内容を標準とし,必要に応じて更に医学的,薬学的知見を調査する義務を負い,医薬品添付文書の記載内容や調査した知見に基づいて医療用医薬品を使用するものであるから,原告の主張する広告宣伝の多大な影響力を認めることはできず,広告宣伝上の欠陥を観念し得ない。(III-174)
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なお,原告らは,被告会社が,イレッサに関して正確な情報提供を行わず,患者らに期待を抱かせてその薬を服用させたことが広告宣伝上の義務違反に当たるとも主張するが,前記第1節第3のとおり,イレッサは医療用医薬品であり,これを処方するのは,必要な医学的,薬学的知見を調査した医師であるから,上記のような義務違反を観念することはできない。(III-176)
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その他の指示・警告 

原告らが主張するその他の指示・警告については,前記第1節第2の2(2)〜(8)のとおり,イレッサ承認当時,本件添付文書第1版に記載する必要があったものということはできず,被告会社に,これらの記載をすべき注意義務があったとはいえない。(III-176)
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