国と製薬会社はイレッサ訴訟の求償権を行使して医師を訴えよ!

共同不法行為の求償権 

医療用医薬品の投与による副作用死の場合は、国と医師と製薬会社の三者による共同不法行為(民法第719条)とみなされる。 この場合、最高裁判例により、いずれかの不法行為者が自己の負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは他の不法行為者にその不法行為者の負担部分を求償することができる。

甲と乙が共同の不法行為により他人に損害を加えた場合において、甲が乙との責任割合に従って定められるべき自己の負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、甲は、乙の負担部分について求償することができる(最高裁昭和六〇年(オ)第一一四五号同六三年七月一日第二小法廷判決・民集四二巻六号四五一頁、最高裁昭和六三年(オ)第一三八三号、平成三年(オ)第一三七七号同年一〇月二五日第二小法廷判決・民集四五巻七号一一七三頁参照)。
平成9(オ)448損害賠償事件の最高裁判決(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121206324041.pdf)

今回のイレッサ訴訟では、医師は訴えの対象に含まれていない。 しかし、国か製薬会社のいずれかの敗訴が確定した場合、敗訴した側が医師を相手取って、過失割合の認定とそれに応じた損害賠償の負担を求めて、裁判を起こすことができる。

真実の追究 

原告は、真実を明らかにしたいから訴訟を起こしたと言う。 それならば、国か製薬会社が敗訴した場合、真実を明らかにするため、求償権を行使して医師を訴えるべきであろう。 そうでなければ、適切な過失割合の認定が為されない。 それは、誰にどれだけの比率で責任があるかが認定されないことを意味するので、真実が闇の中に葬り去られることを意味する。 それでは、原告の求めている、真実を明らかにすることには程遠い。

原告の口実のためよりも、医療の大幅後退を避ける理由の方が重要だ。 もし、万が一、敗訴が確定するようなことがあっても、国や製薬会社は判決を簡単に受け入れるべきではない。 医療の大幅後退を阻止し、かつ、日本の医療を世界最先端まで進歩させるためには、医師の責任も明らかにすべきである。 医師の責任が国や製薬会社に不当に転嫁されたままでは、医薬品の承認に多大な悪影響を与える。 患者の治療を最優先に考えるならダーティ・イメージを背負ってでも、求償権を行使すべきなのである。 マスコミは「医師に責任転嫁する悪徳企業(または政府)」と執拗にバッシングして来るだろう。 しかし、少なくとも本件訴訟においては、患者団体は国や製薬会社の味方だから、安心して、裁判を闘ってもらいたい。

幸いにも、医師の過失の有無を検証するための資料は本件裁判の証拠として原告が出してくれている。 その資料を最高裁判例に照らし合わせれば、医師の重大な義務違反は明らかであるから、医師側の大幅な過失割合を認めさせることは極めて容易だろう。

原告のジレンマ 

どういうわけか、原告は、医師を訴えないだけでなく、医師を執拗に庇っている。 本来なら、真実を明らかにしたいと言うなら、原告が、三者を相手取って裁判を起こすべきなのである。 それなのに、真実を隠蔽するような訴え方を選んだのは、真実を明らかにしたいとする原告の言い分が本音ではないからだろう。 しかし、口実とはいえ、真実を明らかにしたいと公言している以上、表向きは、真実を明らかにする行為には異存がないはずである。 国や製薬会社の求償裁判に対して、反対意見を述べれば、真実を明らかにする気がないと公言するようなものだ。 原告がどのような理由で医師を庇っているのかは知らないが、求償権が行使されれば医師の責任も追及される。 原告は医師を庇ったつもりなのだろうが、初めから医師には逃げ道などないのである。

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