予防原則に沿ったイレッサ高裁判決

原告による歪曲・捏造 

両高裁判決は予防原則に忠実に従った判決である。 しかし、原告は判決文を歪めて 確定的に「因果関係がある」と言える状態に至らなければ、安全対策をとる義務が発生しない 薬害イレッサ訴訟東京高裁判決についての原告団 - 薬害イレッサ弁護団 危険性についてはある程度確実でないと危険情報としての価値を認めない 薬害イレッサ大阪高裁判決の問題点 - 薬害イレッサ弁護団 判決だとして批判している。 しかし、判決文の何処にもそのような文言はない。 原告の主張は全て判決文にない原告による創作である。

判決内容 

ところで,弁論の全趣旨によれば,薬事行政上,生命・身体の保護の観点から,副作用症例と認定する際の有害事象と医薬品投与との因果関係の判定については,「因果関係を否定することができない」か否かが判断基準とされているものと認められる。 この扱いは,「疑わしい場合は副作用報告の対象とする」扱い(前記2(2)(8頁))と同様に,「因果関係がある可能性ないし疑いがある」症例を幅広く「副作用症例」として扱い,医薬品の投与中又は投与後に有害事象が発現した症例をできる限り広く薬事行政に生かしていくための行政上の運用指針として合理性が認められる。

しかし,民事損害賠償法の中には,製造物責任法においても,不法行為法においても,因果関係について,上記のような判断基準は存しない。 医薬品の添付文書における副作用の記載に製造物責任法上の欠陥又は不法行為法上の違法性があったといえるかどうかについて判断する場合には,添付文書の作成時において,当該有害事象と医薬品投与との間に「因果関係がある」といえる事実関係があったのか, あるいは「因果関係がある可能性ないし疑いがある」にとどまっていたのかを具体的事実に基づいて認定した上で,これに基づいて,添付文書における副作用の記載に欠陥等があったといえるかどうか判断する必要がある。

薬害イレッサ東日本訴訟 東京高裁判決 - 薬害イレッサ弁護団P.25


薬事法における医薬品の安全性評価においては,これら因果関係を否定できないと認められる症例も治験副作用報告の対象に含め,発症及ぴ転帰との各因果関係の強弱等を総合して有用性の判断が行われていると解され, このことは製造物責任法上の欠陥(指示・警告義務)判断においても変わるところはないというべきである。 そして,副作用報告の対象となる症例の中にも,実際には,治験薬との間に因果関係が明らかに認められる症例から,原疾患の悪化,併用薬の影響など他の要因による可能性が高いが治験薬による可能性も否定できないというにとどまる症例までが混在しており, 安全性を強調する余り,このような具体的な因果関係の遠近濃淡を区別せず,一律に因果関係のある副作用症例に組み入れて,同じ危険性評価をすることは有効性,安全性について科学的な評価を行うゆえんではなく,薬事法の趣旨にそぐわないことにもなりかねない。 このように,副作用死亡報告といっても,死亡原因が原疾患の悪化による可能性が高く,イレッサとの囚果関係が薄いもの,詳細不明で因果関係の判断がし難いもの等も含まれ, これらを常に明らかな副作用症例と同等の危険性評価を擬するのは不合理であって,それらについては,市販後の副作用報告等により症例を集積,分析して一定の評価を加えていくほかないと考えられる。

薬害イレッサ西日本訴訟大阪高裁判決(全文) - 薬害イレッサ弁護団P.166,167

確かに、どちらの判決も因果関係が明確な場合とそうでない場合を区別すべきとしている。 しかし、因果関係が明確でない場合は何も対策をとらなくて良いとは書いていない。

「上記のような判断基準は存しない」とは、法律上にて明文化されていない事実を指摘しただけであって、判断しないことを意味するわけでも、「上記のような判断基準」と全く違う判断基準を採用すると宣言しているわけでもない。 ただ、明文化規定がないならば、法学的な常識に基づいて判断しようと言っているだけである。 でなければ、この後に「〜といえるかどうか判断する必要がある」が続いていることが説明できない。 であれば、当然、「行政上の運用指針」と大きく掛け離れた判断基準が採用されるわけがない。 事実、ここで書かれた一文も以降の説明も、ちゃんと、「行政上の運用指針」に準じた内容となっている。

以上を踏まえれば、東京高裁判決の判断基準は「行政上の運用指針」に準じた内容であるし、大阪高裁判決の判断基準は「行政上の運用指針」と同じである。 そして、両判決の引用部冒頭=「行政上の運用指針」には、因果関係が明確でない場合にも因果関係が明確な場合に準じた対策が必要とする趣旨が明確に書かれている。 よって、何れの判決においても、「因果関係が明確でない場合は何も対策をとらなくて良い」と解釈する余地はない。

具体的な判断においても、それぞれ、 「重大な副作用」として間質性肺炎があることが記載されている 薬害イレッサ東日本訴訟 東京高裁判決 - 薬害イレッサ弁護団P.36 第1版添付文書の「重大な副作用」欄に「間質性肺炎(頻度不明):間質性肺炎があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には,投与を中止し,適切な処置を行うこと」との記載 薬害イレッサ西日本訴訟大阪高裁判決(全文) - 薬害イレッサ弁護団P.170 を理由に 致死的なものとなることがあることは認識し得た 薬害イレッサ東日本訴訟 東京高裁判決 - 薬害イレッサ弁護団P.36 薬剤性間質性肺炎の一般的副作用の危険性についての警告を包摂するものとして不足はない 薬害イレッサ西日本訴訟大阪高裁判決(全文) - 薬害イレッサ弁護団P.171 としている。 重大な副作用として間質性肺炎を書いたことを理由に致死的な可能性を読み取れるとしているのだから、それは、重大な副作用欄に書かなければ致死的な可能性を読み取れない恐れがあると言っているに等しい。 つまり、致死的な可能性があって因果関係が明確でない場合には最低でも重大な副作用欄に書かなければならないと判示しているのである。

とくに、大阪高裁判決は、重大な副作用について 危険情報として共通して想起できる概念 危険性についての警告を包摂する 薬害イレッサ西日本訴訟大阪高裁判決(全文) - 薬害イレッサ弁護団P.170,171 と繰り返し記載することで、重大な副作用欄が予防原則に基づいた警告であることを明確にしている。

尚、承認時に知り得た危険性としては、それぞれ、 いずれの症例についても,肺癌患者の死亡原因特定の困難性(前記2(2)(7~9頁))を反映して,次に述べるとおり,死亡とイレッサ投与との間に,因果関係の認定を揺るがす症状又は現象が存在しており,「因果関係がある可能性ないし疑いがある」との判断が示されたにとどまり,「因果関係がある」とまで認定することのできる症例は存在しない 薬害イレッサ東日本訴訟 東京高裁判決 - 薬害イレッサ弁護団P.26 薬剤性間質性肺炎の一般的副作用以上の危険性は認めるに足りない 薬害イレッサ西日本訴訟大阪高裁判決(全文) - 薬害イレッサ弁護団P.168 としており、この因果関係が明確でないが致死的な可能性があることを正確に伝える情報として重大な副作用欄への記載が適切だったと両高裁は判断している。

世界の常識 

以下のページに詳しく書くが、予防原則の国際基準において、発生可能性に応じた対応を取るべきとされている。

ウィングスプレッド宣言等、一部のトンデモ集団は国際基準と異なった独自の定義の「予防原則」を採用すべきだと主張している。 しかし、国際基準は、発生可能性に応じた対応を取るべきとした両高裁判決と同じである。 漠然とした可能性も確実な情報と同列に扱えとする原告の主張の方が、世界の常識に反したトンデモなのだ。


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