薬害イレッサ訴訟和解勧告の真相

早期解決という詭弁 

原告側の「早期の全面解決を図るため」という詭弁を暴いてみる。

不思議なことに、報道では、あたかも裁判所が自発的に和解勧告を出したかのように報じられている。 しかし、本当は、2010年11月26日に原告側から和解勧告を求める上申書を提出しているのである。 その口実は「早期の全面解決を図るため」。 イレッサ弁護団が自分から公表しているこの事実を報道機関が知らないとは考えられない。 このことからも恣意的に歪められた報道が行なわれていることが分かるが、今回の本題はそこではない。 ここで問題としているのは、本当に「早期の全面解決を図るため」に上申したのかどうかである。

西日本訴訟は2010年7月30日、東日本訴訟は2010年8月25日にそれぞれ結審している。 そして、2010年8月25日の段階で西日本訴訟の判決は2011年2月25日と決まっていた。 既に述べた通り和解の上申書は、西日本訴訟の結審から約4ヶ月後、東日本訴訟の結審から約3ヶ月後の2010年11月26日に出されている。 裁判所が和解勧告を出したのは2011年1月7日であり、その回答期限は2011年1月28日であった。 仮に回答期限ギリギリに和解を受け入れたとしても、それから具体的交渉を詰める必要があるので、和解日は西日本訴訟の判決予定日よりも1ヶ月も早くはならない。 交渉が長引けば和解時期は判決より遅くなる可能性もあるし、長引いた上に交渉が決裂すれば判決日が後にずれ込むこともあるだろう。 弁護団は弁護士集団であり、裁判についてはそれ相応の経験を積んだ人達であろうから、この日程については事前に予想が出来たはずである。 とすると、和解勧告では「早期の全面解決を図る」ことにならないことは十分に分かっていたはずである。 5年以上も係争してきたしてきた裁判に対して、早くても1ヶ月以下の短縮にしかならず、場合によっては余計に解決が遅くなる危険性もあるのに、何故、このタイミングで和解勧告を上申するのか。 本気で「早期の全面解決を図るため」と考えるなら、どうして、もっと早く和解勧告を上申しないのか。 どう考えても、このタイミングでは早期解決には遅すぎる。 ここまで来たなら和解勧告に持ち込むよりも地裁判決を待った方が手っ取り早い。

と言うと「判決が出ても国や製薬会社が控訴したら長引くじゃないか」と反論されるのだろう。 しかし、よく考えてもらいたい。 国や製薬会社が判決を受け入れないと考えるなら、どうして、和解勧告を受け入れると考えるのか。 和解勧告と判決、どちらが強い効力を持つかは火を見るよりも明らかである。 よって、判決を受け入れない被告なら、判決前の和解勧告を受け入れるはずがない。 ということは、和解勧告に持ち込んでも、原告側にとって「早期の全面解決を図るため」には何の役にも立たないことは誰が見ても明らかだろう。

原告の本音 

では、何故、このタイミングで和解勧告に持ち込もうとしたのか。

イレッサ訴訟の原告は当初2つの争点を掲げました。
(1)イレッサは承認を急ぐあまり、十分な検討がなされず、効かない薬を承認した。それを裏付けるように米国では効能がないとしてFDAが承認を取り消したではないか。
(2)イレッサの副作用で間質性肺炎が多発し、死亡者が続出している。それはイレッサの副作用である間質性肺炎を意図的に隠したか、あるいは注意喚起を怠ったたことがその原因である。
ところが、裁判で判明したことはこの2つの争点がいづれも的を外れていたことです。


原告の主張は2つとも斥けられたのです。ですからこの裁判は成立しないか、訴状は棄却されるべきものです。原告は敗訴を察知し和解の申し入れをしたのです。これは被害者訴訟でよくあるパターンです。
イレッサ訴訟の裏側を覗く-56歳団塊退職起業-62歳がん闘病廃業+イレッサ回復日記(http://blog.livedoor.jp/netatbooth/archives/51826238.html)

不思議なことに、それまでイレッサの承認を厳しく糾弾していたはずの原告が、和解勧告の段階では、何故か、(1)については和解勧告のポイントではないとしつこく繰り返している。 本気で主張していることなら、裁判所の所見にないことであっても、当然、(1)についても反論を返すのではないか。 敢えて反論しないのは(1)を争点にしても勝ち目がないと認識しているからだろう。

(2)についても専門家の意見は概ね否定的であり、支持しているのは原告とマスコミと自称市民運動家くらいである。 国の示したデータを詳細に検証すると、むしろ、国は迅速な対応で副作用被害の拡大を防いでいることが分かる。

残念ながら訴訟の記録を検証したわけではないので、裁判において「原告の主張は2つとも斥けられた」かどうかについては分からない。 しかし、知りうる事実関係を検証すれば、明らかに(1)(2)も間違っている。

一方で、原告側は裁判所が国や製薬会社の責任を認めたと息巻いている。 しかし、裁判所は、和解勧告では訴訟の勝ち負けについては明言しないことが多いという。 確かに、裁判所の所見は、事実を歪めてまで原告寄りとなっている。 だが、裁判所は、国や製薬会社の過失責任については一切言及していないし、過失責任の根拠となる被害と過失の因果関係についても一切言及していない。 もしも、裁判所が原告勝訴の意図を示したうえで所見を述べているなら、国や製薬会社の過失責任や被害と過失の因果関係について一言も触れないのはおかしい。 何故なら、原告勝訴の意図を隠すつもりがないなら、国や製薬会社の過失責任や被害と過失の因果関係について触れない理由がないからである。 そして、国や製薬会社の譲歩が引き出すためには過失責任や因果関係に言及すべきであり、敢えて言及しないとは考え難い。 実のところ、裁判所は、原告を救済することを第一に考えたからこそ、可能な限り原告寄りの所見を示しただけに過ぎないのである。

また、裁判所としても、日程的に和解勧告が早期解決にならないことは当然理解しているはずである。 それなのに、何故、裁判所は原告の上申を受け入れて和解勧告を行ったのか。 原告勝訴が前提であるならば、和解勧告を行なうより判決を下した方が早期解決になると裁判所にも分かっているはずである。 とすると、やはり、原告の救済が必要であるにもかかわらず、国や製薬会社の過失責任を立証できないからこそ、和解勧告をしたと考えるのが妥当だろう。 原告勝訴の判決が出せるなら、有無を言わせずに国や製薬会社が悪いと裁判所が言い渡すのであるから、国や製薬会社から譲歩を引き出す必要はない。 そして、原告敗訴の判決が出れば、国や製薬会社は自分たちの主張が認められたと言い張るので、国や製薬会社から譲歩を引き出すのは難しい。 早期解決目的では判決直前のこのタイミングで裁判所が和解勧告を出すことは説明し難いが、負けそうな原告への救済措置であるなら説明がつく。

原告側の行動についても、勝つ見込みが高いと考えるなら、結審数ヶ月後に和解を上申することは説明が難しい。 しかし、負けそうだと思っているなら、このタイミングでの和解上申も十分に説明がつく。

と考えてみると、「原告は敗訴を察知し和解の申し入れをした」とする指摘は非常に説得力がある。 原告側は、裁判が結審した後、両者の弁論内容を詳細に検証した結果、勝ち目が薄いと判断したのだろう。 だからこそ、このタイミングで和解勧告をしてもらうように上申したのである。

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