イレッサ大阪高裁判決速報
速報…というほど早くないけど。
概要
大阪高裁判決は、東京高裁判決に比べて、分かりやすい説明に努めている。 結果として、原告側が言い掛かりによる難癖を付け難いようになっている。 細かいことを何度も書いてもクドいので本件裁判の最も重要なポイントのみの説明に絞る。
指示・警告上の欠陥について
イ 承認当時の国内治験,海外臨床,EAPを含めて,副作用として扱うべき間質性肺炎の発症例は19症例で,このうち副作用死亡例として扱うべきは11例である。 しかし,イレッサと死亡との因果関係が比較的明確といえるのは1例で,その他の症例は,むしろ病勢進行,感染症など他の原因により死亡したと考える方が合理的ではあるものの,イレッサとの因果関係を否定することまではできないという症例,詳細が不明なために因果関係を否定することができないという症例であった。
薬事法における医薬品の安全性評価においては,因果関係が必ずしも明確でない有害事象も副作用として取り扱った上で有用性,安全性評価が行われ,このことは製造物責任法上の欠陥(指示・警告上の欠陥)についても同様というべきである。 しかし,因果関係の否定できない有害事象を副作用として取り扱うといっても,そのような副作用症例であれば,症例における具体的な因果関係の濃淡を区別せず,常に因果関係の明らかな副作用症例と同一の危険性評価をしなければならないとするのは,安全性の科学的な評価を行うゆえんでなく,安全性の評価は,個別の具体的因果関係の強弱をも考慮して総合評価すべきものである。 本件では,イレッサの投与母数,死亡との因果関係の強弱を前提に,前記19症例についてこのような検討を加えた場合,ここから薬剤性間質性肺炎の一般的な副作用を超える本件副作用の予測まですることは困難であった。
「因果関係の否定できない有害事象」と「因果関係の明らかな副作用症例」を同列に扱うべきでないとするのは科学的に妥当な判断である。
「因果関係が必ずしも明確でない有害事象」も副作用として取り扱った上で有用性,安全性評価を行なうことを明言することで原告側の詭弁を封じている。
ウ 本件患者らの担当医は,肺がん治療又は肺がん化学療法を手がける医師であるが,第1版添付文書の重大な副作用欄を読めば,イレッサの投与により,薬剤性間質性肺炎の一般的な副作用発症の危険性を認識できた。 このような間質性肺炎が警告欄に記載されず,重大な副作用欄の4番目に記載されていたからといって,そのことによって本件患者らの担当医が,その予後が良好であるとか,致死的でないと理解するとは考えがたい。
「本件患者らの担当医」を「肺がん治療又は肺がん化学療法を手がける医師」と認定し、その前提で、「致死的でないと理解するとは考えがたい」と認定している。 東京高裁判決でも、対象患者の担当医が癌専門医である前提で判決を下している。 加えて、大阪高裁判決では、一般医が肺がん治療に当たる場合についても致死的な可能性を読み取れたと判示している点が画期的である。
一般医が肺がん治療に当たる場合であっても,承認されたばかりの新薬,それも種々の副作用の当然予想される抗がん剤を投与するに際し,添付文書の記載表現である重大な副作用と単なる副作用の差異も理解せず, また,多忙を理由に添付文書を読まない,あるいは,警告欄なら別だが重大な副作用欄までは必読しないなどというようなことが, 医療の現場の実態であるなどという事実は,本件全証拠を検討しても,これを認めるに足る資料は発見できない。
さらに、大阪高裁判決では、「本来伝達されるべき情報を希釈する恐れがある」として添付文書に余計なことを書くべきでないとも判示している。
医薬品添付文書の見直し等に関する研究(甲F10)が,添付文書の基本的性格として「添付文書の使用者は,医師・薬剤師など国家試験による資格をもつ医療関係者であるので,その共通の知識水準でカバーされる事項まで煩雑な記載を行うことや,既に汎用されている添付文書の基本的約束ごとを過剰に記載することは,本来伝達されるべき情報を希釈する恐れがある。 従って記載内容はこの前提に立ち必妻不可欠な剖分に止めることを原則とする。 一方,警告・・(中略)・・医療関係者によく知られた用語や記載基準が用いられていなければならない。」ことを確認しているのも,この間の消息を物語るというべきである。
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