イレッサ訴訟東京地裁判決の解説
判決詳細
東京地裁の判決文を読むと、国や製薬会社の責任を認めた理由は次のとおり。
- 「予後は概して良好」=「日常生活に支障をきたす程度の永続的な機能不全に陥るおそれのあるもの」
- イレッサを使用する医師等は、「肝機能,下痢,皮膚の副作用」の審査センターの評価を知っていたが、間質性肺炎の審査センターの評価を知らない
- 承認当時は「可能性」しか知り得なかったが、結果的に重篤だったから、記載内容が不適切
- イレッサだけ特例扱いで「警告」欄に記載しなければならない
- 読む側の落ち度とは無関係に読み誤った者が1〜2人でなければ記載に不備がある
普通の人ならば、これを見て「そんな馬鹿な?」と思うだろう。 しかし、東京地裁の判決文には、そうとしか読めないことが明記されているのである。 嘘だと思う人はイレッサ訴訟東京地裁誤判(不当判決)の原因を良く読んでもらいたい。
判決要旨
有効性等
ウ 厚生労働大臣の承認の違法性
イレッサは,承認当時の医学的,薬学的知見の下で,有用性を肯定することができたから,厚生労働大臣によるイレッサの承認は,国家賠償法1条1項の適用上,違法とはいえない。
薬害イレッサ訴訟東京判決要旨-薬害イレッサ弁護団(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?iressabengodan.com/topics/docs/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%88%A4%E6%B1%BA%E8%A6%81%E6%97%A8.pdf)
国の責任
過失認定
ウ イレッサの添付文書の第1版には,「重大な副作用」に間質性肺炎が記載されていたが,薬剤性間質性肺炎の予後は,薬剤により異なり得るものであり,イレッサによる薬剤性間質性肺炎が致死的なものであることは,添付文書に記載がない限り,一般の医師等には容易に認識できなかった。 イレッサは,従来の抗がん剤と異なる作用機序を有する分子標的薬であって,従来の抗がん剤にほぼ必発であった血液毒性等がなく,従来の抗がん剤に比べて副作用が軽いとのイメージが抱かれやすかった上,添付文書の第1版において,下痢,皮膚,肝機能の副作用の後に間質性肺炎が記載されていることにより,イレッサによる薬剤性間質性肺炎の重篤度が誤解される可能性もあった。 添付文書第1版の記載では,イレッサを使用する医師等には,イレッサによる薬剤性間質性肺炎が従来の抗がん剤と同程度の頻度と重篤度で発症し,致死的となる可能性があることまで認識することは困難であった。
エ したがって,厚生労働大臣は,イレッサの輸入を承認するに当たり,被告会社に対して,イレッサの副作用として間質性肺炎が発症することを,添付文書の警告欄に記載するか,そうでなくても,他の副作用の記載よりも前の方に記載し,かつ,致死的となる可能性のあることを記載するよう行政指導すべきであった。 本件において,他の安全性確保のための十分な措置が講じられたなどの特段の事情も,認められないから,厚生労働大臣が上記権限を行使しなかったことは,イレッサの投与を受ける患者との関係において,国家賠償法上の適用上の違法がある。
オ 添付文書の第3版の記載は,イレッサの副作用として重篤な間質性肺炎が発症し,致死的なものとなる可能性のあることが十分に読み取れ,安全性確保のための情報として十分なものである。
薬害イレッサ訴訟東京判決要旨-薬害イレッサ弁護団(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?iressabengodan.com/topics/docs/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%88%A4%E6%B1%BA%E8%A6%81%E6%97%A8.pdf)
大阪地裁と同様、東京地裁の認定する「一般の医師等」「イレッサを使用する医師等」は、素人同然の藪医者を指すようである。 確かに、歯科医等に対しては「重篤度が誤解される可能性」はあっただろう。 しかし、それは歯科医等が使うべきではないのであって、歯科医等に分かるように書いてなかったことが問題となるわけではない。
大阪地裁判決の解説と同じことを書くが、「その他の副作用」でなく「重大な副作用」欄に書くのは、その副作用が致死的だからである。 致死的でないならば「その他の副作用」欄に書けば済むのであり、わざわざ、「重大な副作用」欄に書く必要はない。 そして、大阪地裁が認定しているように「下痢,皮膚,肝機能の副作用」はいずれも致死的な副作用であり、「の後に間質性肺炎が記載されていること」は致死的でないとの誤解を与える理由にならない。
以上のとおり、素人同然の藪医者を基準にして「国家賠償法上の適用上の違法」と認定することは、明らかな誤判である。
過失と損害の間の因果関係
3 因果関係
○○○○○と○○○○については,イレッサの副作用である間質性肺炎について,添付文書の第1版に致死的となる可能性のあることなどが記載されていれば,イレッサの服用を開始してこれを継続することはなく,イレッサによる間質性肺炎の発症ないし憎悪により死亡することはなかったものと認められる。
薬害イレッサ訴訟東京判決要旨-薬害イレッサ弁護団(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?iressabengodan.com/topics/docs/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%88%A4%E6%B1%BA%E8%A6%81%E6%97%A8.pdf)
どうして、素人同然の藪医者が「イレッサの服用を開始してこれを継続することはなく」と断言できるのか。 「その他の副作用」欄ではなく、わざわざ、「重大な副作用」欄に書いた意味さえ読み取れずに添付文書を軽視した藪医者が、どうして、「添付文書の警告欄に記載」か「他の副作用の記載よりも前の方に記載し,かつ,致死的となる可能性のあることを記載」であれば軽視しないと断言できるのか。
たった1例でも重篤な副作用の可能性を示唆する症例を全て警告欄に書いたとして、どうしてイソップ寓話の狼少年にならないと言えるのか。
こんなのすべての薬で出ます
イレッサと副作用-癌掲示板
ほとんどすべての薬の能書に出てくるフレーズ
イレッサと副作用-癌掲示板
これを特別に警戒しようとは誰も思いますまい
イレッサと副作用-癌掲示板
まさか自分に当たるなんて
イレッサと副作用-癌掲示板
と、警告欄も軽視することがないとどうして断言できるのか。
製薬会社の責任
「欠陥」と損害の間の因果関係
これは国に対する判断と同じであるので省略。
通常有すべき安全性
(2)指示・警告上の欠陥 イレッサの添付文書の第1版の記載では,イレッサを使用する医師等に対する間質性肺炎の副作用に係る安全性確保のための情報提供として不十分なものであったから,イレッサには指示・警告上の欠陥があり,製造物責任法2条2項にいう「通常有すべき安全性を欠いている」状態にあった。
添付文書の第3版の記載は,安全性確保のための情報提供として十分なものと認められるから,製造物責任法の欠陥はない。」
薬害イレッサ訴訟東京判決要旨-薬害イレッサ弁護団(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?iressabengodan.com/topics/docs/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%88%A4%E6%B1%BA%E8%A6%81%E6%97%A8.pdf)
これも国に対する判断を元にしているので省略。
開発危険の抗弁
(イ)イレッサの国内臨床試験において,重篤な副作用として間質性肺炎の発現が見られたが,他の新規抗がん剤と比べた場合,イレッサの国内臨床試験における間質性肺炎の発症頻度及び重篤性が特に高いものであるという根拠はなく,参考試験やEAP症例の副作用報告を考慮しても,イレッサにより,承認用量で,間質性肺炎が従来の抗がん剤と同程度の頻度や重篤度で発症し,致死的となる可能性があると認められるものではあったが,間質性肺炎の発生頻度や,早期に発症して予後が悪い等の発症傾向を予見させるものとはいえなかった。
薬害イレッサ訴訟東京判決要旨-薬害イレッサ弁護団(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?iressabengodan.com/topics/docs/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%88%A4%E6%B1%BA%E8%A6%81%E6%97%A8.pdf)
以上まとめる。
- 国内臨床試験における間質性肺炎の発症頻度及び重篤性が特に高いものであるという根拠はなかった。
- 参考試験やEAP症例の副作用報告でも、間質性肺炎の発生頻度や早期に発症して予後が悪い等の発症傾向を予見させるものとはいえなかった。
これでどうして開発危険の抗弁が認められないのか不思議である。 間質性肺炎より前に書かれた「下痢,皮膚,肝機能の副作用」が全て致死的な副作用であり、かつ、発症頻度及び重篤性が特に高い根拠がないのだから、「他の副作用の記載よりも前の方に記載」すべきとする根拠がない。 全てを警告欄に書いてもイソップ寓話の狼少年になるだけである。
- このページの参照元
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