治療関連死は医師の責任か?
大原則
たとえば、目の前に瀕死の意識不明患者がいるとする。
- 家族には連絡がとれない。
- 治療しなければ2時間後には確実に死ぬ。
- 治療をすると90%の確率で10日以上延命出来るが、10%の確率で治療が原因で1時間以内に死ぬ。
このような場合、治療をすべきかどうか。 治療をすれば確率的期待値として9日以上の延命ができる計算だから、治療をした方が得である。 しかし、日本では、確率的に避けられない死であっても、医療事故として医師の責任が問われてしまう。 このような一定確率で避けられない死について、医師の責任を問うのは正しいのだろうか。
たとえば、適切な治療を行えば死ぬ確率は10%で済んだのに、治療が不適切だったために死ぬ確率が50%に上がったとしたらどうだろうか。 これで医師の過失責任を問われないなら、医師はどんな無責任な治療を行っても許されることになる。 医師には資格が必要であり、高度な医療サービスを提供することが求められているはずである。 それなのに、不適切な治療行為について、医師の責任を免責するのは正しいのだろうか。 以上まとめると、次のようになる。
- 治療関連死が一定確率で避けられない以上、その確率のみで生じた治療関連死の責任を医師に問うのは間違っている。
- 治療関連死が一定確率で避けられないことだけを理由にして、医師の責任が無条件で免責されるのも間違っている。
具体的条件
医師として為すべきこと、できることを考慮すれば、医師の責任が問われるかどうかは次のようなことを総合的に判断すべきと考えられる。
- インフォームドコンセントが十分かどうか(可能な場合に限る)
- 医学的にみて患者にとって有利な選択をしているかどうか(大まかな治療方針だけでなく、細部の個々の判断も含める)
- 過失等があった場合に、それを免責すべき理由があるかどうか
この判断には
医療水準は、医師の注意義務の基準(規範)となるものであるから、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものではなく、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない。
医師が医薬品を使用するに当たって右文章に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである。
平成4(オ)251 損害賠償請求事件 平成8年01月23日 最高裁判所第三小法廷
必要に応じて文献を参照するなど,当該医師の置かれた状況の下で可能な限りの最新情報を収集する義務があるというべきである。
平成12(受)1556 損害賠償請求事件 平成14年11月08日 最高裁判所第二小法廷
とする判示も考慮すべきだろう。
イレッサ“薬害”
原告の事例に限れば、別途検証したとおり、医師が合理的理由なく添付文書の「重大な副作用」欄を軽視している。 この事例では明らかに医師の重大な過失が認められるため、医師の責任が問われるべきと言える。
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- 裁判所勧告を受けた国のコメントに関するQ&A
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関係団体等
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- 患者団体はイレッサ“薬害”の見解を述べよ!
- “薬害”イレッサ訴訟で国と製薬会社の控訴は当然
- 国と製薬会社はイレッサ訴訟の求償権を行使して医師を訴えよ!