イレッサ東京高裁判決の解説
地裁判決との差
イレッサ訴訟東京地裁判決との差はイレッサ東京訴訟地裁判決と高裁判決の比較にて。
承認の妥当性
8 イレッサの臨床試験についての不相当性の有無
イレッサの適応である非小細胞肺癌は,前記2(1)認定のとおり(7頁),極めて治療が困難で死亡率も高く,治療法の進展が強く望まれていたものである。
抗癌剤については,平成3年に発出された厚生省薬務局新医薬品課長通知「『抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン』について」(平成3年2月4目薬新薬第9号,各都道府県衛生主管部(局)長あて)(乙H7)があり,この通知に係るガイドラインによれば,医薬品の製造販売・輸入販売の承認申請のための評価対象臨床試験のうち,第Ⅲ相の臨床試験の成績は,承認時までにその試験の計画書を提出するとの条件付きで,承認後に提出することも認めるものとされていた。 これは,抗癌剤による治療の迅速進展と安全性の調和を図るために,当時の厚生省に設置された「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン作成に関する研究班」の研究の結果設けられた有権的ガイドラインである。 イレッサの臨床試験(前記6(2)イ(22,23頁))は,このガイドラインに適合したものである。
上記の臨床試験の在り方について,第1審原告らは,第Ⅲ相試験を経ずに医薬品としての有効性を検証するには,申請に係る医薬品に関して,第Ⅲ相試験による有効性の証明まで相当長期間がかかると具体的に見込まれる場合であることが必要である等と主張するが,その主張に理由がないことは,原判決III−19頁7行日冒頭からIII−27頁20行目末尾までに記載のとおりである。
なお,上記ガイドラインは,平成17年11月1日改定され,平成18年4月1日から製造販売承認を申請する抗癌剤については,非小細胞肺癌等の患者数が多い癌種を対象とする場合には,原則として,承認前に第Ⅲ相試験を実施することとされた(甲H6)。 これは生命尊重のための一つの政策選択であるが,手術不能で抗癌剤や放射線治療の効果もないことが多く,毎年6万人を超える死亡者を出している肺癌治療の実情からすれば,安全性に配慮しつつ有効性のある新医薬品を迅速に承認することも,生命尊重のための一つの政策課題であり,従来のガイドラインに基づく医薬品の有効性及び安全性の検証の相当性が,上記のガイドラインの変更によって左右されるものではない。
以上のとおりであるから,イレッサの承認申請に係る臨床試験の範囲及び内容が不相当であったものということはできない。
薬害イレッサ東日本訴訟 東京高裁判決 - 薬害イレッサ弁護団(p.43,44)
がん患者の実情を良く理解した認定である。
医師の認識
(3)輸入承認時における薬剤性間質性肺炎についての医師の認識状況
ア ①平成8年6月発行の医学図書「理解しやすい,学生のための呼吸器病学」(原耕平名誉教授ほか著)(乙F8)によれば,「肺の間質を病変の主座とする肺疾患の総称が間質性肺疾患である。現在130もの多数の疾患が含まれるが,非常にまれな疾患も多く,病因が判明しているものは約1/3にすぎない。治療としてステロイド剤が有効な症例もあるが,ほとんどの症例は奏功せず,予後は一般的に不良で,呼吸および循環不全に陥る傾向が強く,死に至りやすい。」とされている。
②平成9年5月発行の医学雑誌「診断と治療」(85巻5号)中の高橋亨医師ほか執筆の「薬剤性間質性肺炎」(丙F16)によれば,「抗癌剤や免疫抑制剤による直接的な細胞傷害を来した場合は,投与中止後も徐々に病変が進行していく可能性があり,半数以上はステロイド薬が無効であるため,予後は不良である。」とされている。
③平成10年12月発行の医学図書「臨床医」中の中川和子助教授ほか2名執筆の「薬物による間質性肺炎」(乙F13の4)によれば,「医・薬学雑誌の症例報告では,間質性肺炎の症例報告が平成2年以降急速に増加し,薬剤性疾患のうち376例(診断の明らかなもののうち37%)を占めた。」「全治,軽快例が9割を占めた。治療の主体はステロイド療法であり,ステロイド治療群で完治例の割合が高い傾向がみられ,早期のステロイド治療の有効性が示唆された。一方,薬剤が直接死因に関係したものが9例あり,死亡率は4.7%と推計された。」とされている。
④平成13年4月発行の医学図書「呼吸器疾患最新治療2001−2003」(工藤翔二ほか編)(丙F21)によれば,「薬剤誘起性肺炎(間質性肺炎,肺繊維症等)の原因薬剤は時代とともに変化し,1980年以前の原因薬剤は61種類で抗癌薬・免疫抑制薬が80%以上を占めたが,1980年代に抗生物質が増加し,1990年以後はリウマチ治療薬,漢方薬,インターフェロン・・・など新しい治療法の導入に伴う副作用が発生し,原因薬剤も215種類に増加している。」「全治・軽快例が9割である一方で,死亡率は5%に上り,既存の肺病変+抗リウマチ薬もしくは抗癌薬(特に胸腔内投与)がその危険因子と考えられた。。」とされている。
⑤平成14年発行の医学図書「わかりやすい内科学(第2版)」(井村裕夫編集主幹)(丙F18)lこよれば,「薬剤性肺炎とはどういう病気か:薬剤投与により引き起こされる呼吸器疾患で,多彩な病型がある。」「間質性肺炎は,薬剤性肺炎のなかでも最も多い。また,致命的な肺繊維症へと進行することがあるため,早期に発見し,治療する必要がある。」とされている。
イ 平成4年に発出された厚生省薬務局安全課長通知「医薬品等の副作用の重篤度分類基準について」(前記(2)コ(32頁))によれば,間質性肺炎は,重篤な副作用と考えられる「グレード3」,すなわち,「患者の体質や発現時の状態等によっては,死亡又は日常生活に支障を来す程度の永続的な機能不全に陥るおそれのあるもの」に区分されている。
ウ 以上のとおり,薬剤性聞質性肺炎は,抗癌剤,抗リウマチ薬その他の特定の疾病ないし症状に著効のある医薬品の投与により生じる一般的な副作用であり,その場合に,割合は異なるが,一般に死亡の危険が伴うものであり,このことは医学図書や医学雑誌にも解説されている(前記ア)。 さらに,平成4年には,薬剤の副作用としての間質性肺炎を「グレード3」,すなわち,患者の体質や発現時の状態等によっては「死亡又は日常生活に支障を来す程度の永続的な機能不全に陥るおそれのあるもの」に区分した厚生省薬務局安全課長通知が発せられていたこと(前記イ)からすると,癌治療について専門的な知識経験を有する医師(以下「癌専門医」という。)又は肺癌に係る抗癌剤治療を行う医師(以下「肺癌に係る抗癌剤治療医」という。)には,輸入承認当時,薬剤の副作用により間質性肺炎が発症した場合には死亡することがあり得るということが知られていたものと認められる。 したがって,癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医においては,抗癌剤等の医薬品の投与により間質性肺炎が発症した場合,それが致死的となり得ることを認識していたものということができる。
エ ところで,イレッサは肺癌に係る分子標的薬であり,従来の細胞傷害性抗癌剤とは作用機序を異にし,従来の細胞傷害性抗癌剤にほぽ必ず生じる血液毒性,消化器毒性,脱毛等の副作用がほとんど見られないものであるため,抗癌剤の副作用に苦しむ癌患者の実情を熟知する癌専門医・医療研究者としては,従来の抗癌剤に生じる副作用がほとんど見られない分子標的薬について,今後の可能性を秘めた医薬品として期待感があったものといえる。 このような状況の中で,分子標的薬の今後の可能性について論じた医学雑誌等の記事の中には,「副作用は臨床的には殆ど認められないことが予想される」(甲F103),「癌細胞で変異した分子を標的とした副作用の少ない治療薬が考案され臨床応用されっつある」(甲F107),「投与量規定因子は下痢,肝機能障害であり,最も頻発する副作用は脂漏性皮疹であった。ほとんどの症例で血液毒性は認められず,従来の抗癌剤と全く異なった副作用プロファイルを示した」(甲F108,109)などの記述がある。 これらの記事はいずれも,イレッサの臨床試験段階での試験結果,外国における分子標的薬の使用実績,イレッサの輸入承認の1年前である平成13年に輸入承認がされた乳癌に係る分子標的薬トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)の我が国での使用実績等に基づき,イレッサの輸入承認前に発表されたものであり,当時の認識としては誤りとはいえないものの,イレッサの輸入承認後に肺癌患者に発生した間質性肺炎の副作用症例に基づいて考察すると,従来の抗癌剤に生じる血液毒性等の副作用がほとんど生じないという記述に重きが置かれすぎていて,間質性肺炎発症の副作用について無防備な記述となっているものといえる。
しかし,平成14年のイレッサの輸入承認以前には,我が国において肺癌治療に分子標的薬が使用された実績はほとんどなく,EAPとしてのイレッサの国内患者への使用例があったのみであり(前記6(2)カ(27頁)),しかも,本件添付文書においては,第1版以来,適応が「手術不能・再発非小細胞肺癌」に絞り込まれた上,「重大な副作用」として間質性肺炎があることが記載されている(前記(2)コ(31頁))。 したがって,イレッサの輸入承認前に上記のような期待感を表明する医学雑誌記事等が一定数あったとしても,薬剤性間質性肺炎は抗癌剤投与等により生じる一般的な副作用であり,しかも,本件添付文書中に,適応及ぴ副作用に関し上記の記載がされていたことからすれば,イレッサの服用を指示した癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医においては,イレッサについても重大な副作用として間質性肺炎が発現する可能性があり,その場合に致死的なものとなることがあることは認識し得たものというべきである。 添付文書上の上記記載にもかかわらず,上記の医学雑誌等の記事の影響で,添付文書を読んでイレッサ投与を指示した医師が,イレッサについて何の副作用もない医薬品であるという認識を持ったと認めるのは困難である。
第1審原告ら提出に係る報告書(甲L285)によれば,平成14年9月当時日本大学医学部付属病院呼吸器外科に勤務していた医師は,「もちろん添付文書を確認していますが,イレッサの場合は,添付文書に赤枠の警告欄はなく,副作用が少ないという前評判どおりだったという記憶です。」と述べている。 しかし,この医師は癌専門医であると認められるにもかかわらず,上記報告書において,添付文書に「赤枠の警告欄」がないことを述べるのみであり,添付文書上,適応が手術不能・再発非小細胞肺癌に限定され,添付文書に「重大な副作用」として4つの疾病又は症状が記載されていることに関し,癌専門医としてどう認識していたかを全く述べておらず,また,添付文書の記載につき「副作用が少ないという前評判どおりだった」と認識した具体的根拠についても,赤枠の警告欄がないこと以外には何ら指摘していないのであり,この報告書が上記認定を揺るがすものとは到底認め難い。
薬害イレッサ東日本訴訟 東京高裁判決 - 薬害イレッサ弁護団(p.33〜37)
- 医学図書や医学雑誌には次のように薬剤性間質性肺炎が解説されている
- 1990年以後は、抗生物質、リウマチ治療薬、漢方薬、インターフェロンでも生じる一般的な副作用である。
- ステロイドが無効な症例が多く、予後が悪くて死に至りやすい。
- 早期のステロイド治療の有効性が示唆されている。
- 厚労省通達で、間質性肺炎は「死亡又は日常生活に支障を来す程度の永続的な機能不全に陥るおそれのあるもの」に分類されている。
この前提ならば、「癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医」以外の抗生物質、リウマチ治療薬、漢方薬等を投与する医師も、当然、薬剤性間質性肺炎の危険性や治療法を認識していなければならない。 よって、「癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医」であれば、尚更、薬剤性間質性肺炎の危険性や治療法を認識していなければならない。
- 癌専門医としては、分子標的薬について今後の可能性を秘めた医薬品として期待感があった。
- イレッサ紹介記事は、血液毒性等の記述に重きが置かれすぎていて,間質性肺炎について無防備な記述となっている。
- 我が国において肺癌治療に分子標的薬が使用された実績は殆どない。
- 本件添付文書においては,第1版以来,適応が「手術不能・再発非小細胞肺癌」に絞り込まれた上,「重大な副作用」として間質性肺炎があることが記載されている。
確かに、イレッサの間質性肺炎が過小評価されやすい傾向にはあったのだろう。 しかし、東京高裁判決が認めた事実を元にすれば、薬剤性間質性肺炎に関する従来認識や「重大な副作用」欄の記載を完全に覆すほどの確定した安全認識を生じさせたとは言い難い。 よって、「イレッサについて何の副作用もない医薬品であるという認識を持ったと認めるのは困難である」とする認定は妥当だろう。
原告側が提出した報告書については、次のように認定している。
- この医師は癌専門医と認められるのに「赤枠の警告欄」がないことしか述べていない。
- 適応限定や4つの重大な副作用の記載について癌専門医としてどう認識していたかを全く述べていない。
- 「前評判どおりだった」と認識した具体的根拠は、赤枠の警告欄がないこと以外には何ら指摘していない。
癌専門医であるにもかかわらず、「赤枠の警告欄」がないことだけをもって、「重大な副作用」欄に書かれた間質性肺炎を軽視したとすれば、医師として論外であろう。 よって、「この報告書が上記認定を揺るがすものとは到底認め難い」とする認定は極めて妥当である。
通常予見される使用形態
(2)イレッサの処方を受ける者とイレッサを処方する医師
イレッサは要指示薬であり,劇薬であり,新医薬品であり,肺癌の中の「手術不能又は再発非小細胞肺癌」のみを効能・効果の対象疾患とし(前記(1)ア〜ウ),本件添付文書中に「本剤の化学療法未治療例及ぴ術後補助療法における有効性及び安全性は確立していない」とされている医薬品であって(前記6(2)コ(31頁)),イレッサの処方を受ける者は,肺癌患者の中でも手術不能又は再発非小細胞肺癌に罹患した特に治療が困難な者であるといえる。 また,イレッサのこの特質を考えると,本件添付文書第1版ないし第3版に基づいてイレッサを処方する医師は,癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であるものといえる。
なお,前記3認定の事実(9〜15頁)及ぴ乙個①1,乙個②1,乙個③2の1によれば,本件患者らの治療に当たった担当医は,いずれも癌治療の態勢の整った総合病院における癌専門医であったと認められる。
(3)前記(1)及び(2)の特質に基づく本件添付文言の説明の対象者
前記(1)及び(2)認定のとおり,イレッサは,手術不能又は再発非小細胞肺癌に罹患した患者を対象とする要指示薬であり,劇薬であり,新医薬品であり,イレッサを投与する医師は癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であることからすると,本件添付文書第1版ないし第3版の説明の対象者は,癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であるものと認められる。
薬害イレッサ東日本訴訟 東京高裁判決 - 薬害イレッサ弁護団(p.42,43)
これは、製造物責任法第2条第2項の「通常予見される使用形態」に関する言及と思われる。 そして、「本件患者らの治療に当たった担当医」も癌専門医なのだから、裁判対象の事例は「通常予見される使用形態」の範囲を超えていない。
指示・警告上の欠陥
9 指示・警告上の欠陥の有無についての判断
(1)本件添付文書第1版に警告欄がないこと及ぴ間質性肺炎の副作用により致死的事態が生じ得るとの記載がないことが指示・警告上の欠陥といえるか
ア 前記6ないし8認定の事実によれば,次のとおり認められる。
①イレッサは要指示薬であり,手術不能又は再発非小細胞肺癌を対象疾患とするものであって,イレッサの投与の判断をする医師は癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であり,本件添付文書の説明の対象者も癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であると認められる(前記7(1)〜(3)(41〜43頁))。 ②そして,薬剤性間質性肺炎は従来の抗癌剤や抗リウマチ薬等の投与で生じる一般的な副作用であり,癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医は薬剤他間質性肺炎の副作用により死亡することがあり得ることを承知していたと考えられる(前記6(3)ウ・エ(34〜37頁))。 ③このような状況の中で,本件添付文書第1版には,適応を「手術不能又は再発非小組胞肺癌」に限定する記載がされ,「関連する使用上の注意」として「本剤の化学療法未治療例及ぴ術後補助療法における有効性及び安全性は確立していない」との付記がされ,「重大な副作用」として「4)間質性肺炎」と記載されている(前記6(2)コ(31頁))。
一方,④イレッサの臨床試験における国内症例については,評価対象臨床試験及び評価対象外臨床試験を通じて,間質性肺炎の発症例は3例にとどまり,それらのいずれにも死亡者は出ていない(前記6(2)エ(24頁))。 ⑤臨床試験における国外症例については,評価対象臨床試験では,イレッサに起因する間質性肺炎の発症例はない。 評価対象外の参考臨床試験においては,5例の間質性肺炎の発症例があり,うち4例がイレッサ投与との因果関係を否定することができない死亡症例であったが,これら4死亡症例は,間質性肺炎発症の可能性のある3剤併用化学療法が行われたため間質性肺炎がイレッサにより発症したかどうかが不明な症例や,癌の進行が著しく癌性リンパ管症など癌自体の有害作用で死亡したことが疑われる症例など,いずれもイレッサ投与と死亡との因果関係の認定を揺るがす症状又は現象が生じていた症例であり,イレッサ投与と死亡との間に因果関係があるとまでは認められないものであった(前記6(2)オ(24〜27頁))。 ⑥これら国内④及び国外⑤のいずれの臨床試験についても,その範囲及び内容が不相当であったとは認められない(前記8(43,44頁))。 ⑦EAP副作用情報においては,イレッサ投与との因果関係を否定することができない死亡症例が9例あったが,いずれも因果関係の認定を揺るがす症状又は現象が生じていたものであり,因果関係があるとまでは認められないものであった(前記6(2)カ〜ク(27〜30頁))。 ⑧添付文書における副作用の記載内容に欠陥があるかどうかを判断する場合に,臨床試験等における有害事象の発生と医薬品の投与との間に「因果関係がある」のか,因果関係があるとまではいえず「因果関係がある可能性ないし疑いがある」にとどまるのかを具体的事実に基づいて認定して考察すべきことは,前記6(2)オ(25,26頁)に記載のとおりである。
⑨臨床試験において,間質性肺炎及びこれによる死亡とイレッサ投与との関連性を否定することができない症例が存在することから,市販開始後に,引き続きイレッサの有効性及ぴ安全性を確認するため,第1審被告会社において,無作為化比較試験及び前記6(2)サ記載の内容の市販直後調査(32,33頁)を実施することとされた(前記6(2)ケ(30頁))。
以上①ないし⑤の諸事実に照らせば,「重大な副作用」欄に「間質性肺炎」の記載をするに際し,「観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと」との説明を加えながら,致死的事態が生じ得る旨を記載しなかった本件添付文書第1版(前記6(2)コ(31頁))について,それが合理性を欠くものと認めることはできないものというべきであり,したがって,その記載に指示・警告上の欠陥があったものということはできない。
イ イレッサについて行われた臨床試験においては,前記ア⑤記載のとおり,イレッサ投与との因果関係を否定することができない死亡症例が国外臨床試験にあるものの,因果関係があるとまで認められるものはない。
ところで,イレッサ市販後の臨床例の集積により判明した事実によれば,イレッサ投与の副作用としての間質性肺炎の発症は,日本人に対してのみ高い率で生じるものである(前記6(4)エ(39頁))。 したがって,仮に臨床試験において日本人の症例の割合の増加を図っておいたとすれば,対象患者の全身状態等によっては,臨床試験中にイレッサ投与による副作用としての間質性肺炎による死亡症例が発現した可能性はあるといえる(前記5(2)イ(18頁)の副作用発症因子参照)。 しかし,副作用の発症率が日本人にのみ高いという臨床結果はイレッサ市販後に判明したことであり,従来の抗癌剤の中に重大な副作用の発症率が日本人にのみ高いものがあるとの知見はなく,我が国の臨床試験の基準に照らしてイレッサの臨床試験に違法・不当な点があったわけではないから,イレッサの臨床試験について,日本人の症例の割合が少ないという欠陥があったものということはできない。
ウ 平成14年10月15日改訂の本件添付文書第3版には,文書冒頭に「警告」欄が設けられ,間質性肺炎が現れることがある旨が記載されている(前記6(4)イ(38頁))。 本件添付文書第3版に上記警告欄が設けられたのは,輸入承認後に販売がされる中で,イレッサ投与による間質性肺炎が発症し,多数の致死的症例も生じたことを踏まえて添付文書の改訂が行われた結果であり(前記6(4)ア,イ(37,38頁)),間質性肺炎発症の副作用について特に注意を喚起するものであって相当な措置であるといえる。
本件添付文書第1版の記載はこれとは異なり,文書冒順に警告欄が設けられていない。 しかし,間質性肺炎は従来の抗癌剤等による一般的な副作用であり,イレッサを処方するのは癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であり,当該医師は,薬剤性間質性肺炎により致死的事態が生じ得ることを認識していたものといえる。 仮にその医師に,『分子標的薬には従来の抗癌剤に生じる副作用が生じない』という医学雑誌記事等に基づく予備知識(前記6(3)エ(35頁))があったとしても,本件添付文書第1版は,イレッサの適応を「手術不能・再発非小細胞肺癌」に限定し,「重大な副作用」欄に間質性肺炎を含む4つの疾病又は症状を掲げていたのであり,添付文書を一読すれば,イレッサには4つの重大な副作用があり,適応も非小細胞肺癌一般ではなく,手術不能・再発非小細胞肺癌に限定されていることを読み取ることができ,それを読む者が癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であるならば,それが副作用を全く生じない医薬品とはいえないものであることを容易に理解し得たと考えられる。 これらの医師が,仮に本件添付文書第1版の記載からその趣旨を読み取ることができなかったとすれば,その者は添付文書の記載を重視していなかったものというほかない(前記6(3)エの甲L285号証に係る説示(36,37頁)参照)。
イレッサについての臨床試験等の結果が前記ア④ないし⑦記載のとおりであったにもかかわらず,肺癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医を対象とした本件添付文書第1版の記載の違法性の判断において,「間質性肺炎の副作用について文書冒順に警告欄を設けないのは違法である」,「警告欄について赤枠囲いをしないのは違法である」等として,添付文書の内容如何ではなく,目に訴える表示方法を違法性の判断基準として取り上げるとすれば,それは司法が癌専門医及び肺癌に係る抗癌剤治療医の読解力,理解力,判断力を著しく低く見ていることを意味するのであり,真摯に医療に取り組むこれら医師の尊厳を害し,相当とはいえない。 警告欄のない本件添付文書第1版に指示・警告上の欠陥があったということはできない。
(2)「重大な副作用」の記載順序と指示・警告上の欠陥の有無
添付文書の「重大な副作用」欄には,一般に死亡又は日常生活に支障を来す程度の永続的な機能不全に陥るおそれのあるものが記載されるものである。 本件添付文書第1版の「重大な副作用」欄には,①重度の下痢,脱水を伴う下痢,②中毒性表皮壊死融解症・多形紅斑,③肝機能障害に続けて,④「間質性肺炎」が掲げられているが,これらの疾病又は症状は,平成4年の厚生省薬務局安全課長通知「医薬品等の副作用の重篤度分類基準について」の中で,いずれも最も重篤な副作用である「グレード3」,すなわち,「死亡又は日常生活に支障を来す程度の永続的な機能不全に陥るおそれのあるもの」に区分されており(前記6(2)コ(32頁)),また,肺癌患者は全身状態等が悪化している場合が多く,これらいずれの副作用についても死亡又は重篤な機能不全に陥るおそれがあったものといえる(前記2(2)(7,8頁))。 一方,イレッサについての評価対象臨床試験における副作用症例を見ると,イレッサとの因果関係が否定できない重篤な有害事象(NCI-CTCグレード3以上)として,下痢10例,肝機能障害7例及ぴ間質性肺炎3例が報告されており,間質性肺炎が最も多い副作用ではなく,これらいずれの副作用症例についても,評価対象臨床試験において死亡例は生じていない(前記6(2)コ(32頁))。 また,評価対象外臨床試験等における死亡症例においては,いずれについても間質性肺炎発症後の死亡とイレッサ投与との間の因果関係の認定を揺るがす症状又は現象が存在していた(前記6(2)オ〜ク(25〜30頁))。
以上のとおり,「重大な副作用」欄中の1番目から3番目までに掲げられた副作用も,4番目の間質性肺炎と同様に,いずれも重篤な副作用に区分され,当該患者の全身状態等によっては,そのいずれもが死亡又は重篤な機能不全に陥るおそれのあるものであり,また,評価対象臨床試験において間質性肺炎が高い割合で発現していたとはいえない状況にあったものである。 しかも,本件添付文書の説明の対象者が癌専門医及び肺癌に係る抗癌剤治療医であり,また,イレッサについての評価対象外臨床試験等の結果における死亡症例についてイレッサ投与との因果関係の認定を揺るがす症状又は現象が存在していたことに照らせば,間質性肺炎を本件添付文書第1版の「重大な副作用」欄の4番目に掲げ,1番目に掲げなかったことをもって,指示・警告上の欠陥があったものということはできないものというべきである。
(3)患者本人等による読解と指示・警告上の欠陥の有無
本件添付文書第1版中に重大な副作用として「間質性肺炎」とのみ記載された場合,癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医とは異なり,患者本人やその家族が自らこれを読んだ場合には,当該記載が致死的なものであるかどうかを承知し得ないことが少なくないといえる。 しかし,イレッサは要指示薬であり,手術不能又は再発非小細胞肺癌を対象疾患とするものであって,本件添付文書第1版に基づきイレッサの効能・効果と副作用について検討し,これを投与するかどうかを決定するのは,癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であり,患者本人やその家族に対しては,上記医師から必要に応じて説明がされることを前提としていたものである。 したがって,患者本人やその家族が読んだ場合にも,重大な副作用である間質性肺炎が致死的なものであるとわかるように記載しない限り指示及び警告上の欠陥があるとする第1審原告らの主張を認めることはできない。
イレッサの副作用としての間質性肺炎について,これを医学上の専門知識のない者が自ら読んで理解できるように添付文書中に記載するには,間質性肺炎が致死的であるかどうかばかりでなく,間質性肺炎の定義,聞質性肺炎の症状と診断方法及び治療方法,その他間質性肺炎全般について平易に説明をすることを要するのであって,これを要求することは,要指示薬及ぴ劇薬の指定がされている医薬品の添付文書の趣旨,目的の範囲を趨える。
(4)入院中投与,使用医師・医療機関の限定及び全例登録調査をすべき旨の記載をしなかったことについての指示・警告上の欠陥の有無
第1審原告らは,本件添付文書第1版ないし第3版において,イレッサの投与を入院中に行うべき旨を記載しておらず,これは指示・警告上の欠陥に当たると主張する。 しかし,市販後に判明した副作用も含めて,イレッサについて生じる間質性肺炎の内容及ぴ程度を考慮しても,内服薬であるイレッサの投与に際しての入院の要否及ぴ当否を,当該副作用の関係のみで決定すぺきものと認めることはできないから,イレッサの投与に際し入院中投与を義務づけるべきであるとの第1審原告らの主張は理由がない。
本件添付文書第4版においては,「急性肺障害や間質性肺炎が本剤の投与初期に発生し,致死的な転帰をたどる例が多いため,少なくとも投与開始後4週間は入院またはそれに準ずる管理の下で,間質性肺炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うこと」との記載が従来の記載に追加されている(前記6(4)ウ(38頁))。 しかし,亡●●●●●及ぴ亡●●●●は,両名とも,イレッサ投与開始後49日間ないし36日間経過した後に初めて重篤な肺障害を発症しており(前記3(1)(3)(9〜11,13〜I5頁)),上記注意事項がカバーする範囲に収まらない症状の経過をたどって,しかも入院して治療を受けつつ死亡したものであり,上記記載がないことと両名の間質性肺炎による死亡との間に因果関係があるものということはできない。
本件患者らの担当医が癌専門医であり,その入院先が癌治療態勢の整った総合病院であること(前記7(2)(42頁))からすると,使用医師及び使用医療機関の限定の主張は,本件においてはおよそ理由がない。 また,全例登録調査の主張も,市販直後調査に代えてこれを実施することと本件患者らの死亡との間に因果関係があることを認めるに足りる証拠はないから,理由がない。
(5)指示・警告上の欠陥に関する第1審原告らのその他の主張について
第1審原告らは,本件添付文書の重大な副作用欄の間質性肺炎の摘示部分に「頻度不明」と記載したことが指示・警告上の欠陥であると主張する。 しかし,前記6(2)エないしク認定の臨床試験等の結果(24〜30頁)並びに(4)イ及びエ〜カ認定の輸入承認後の臨床研究の結果(37〜40頁)によれば,間質性肺炎の発症の頻度について,本件添付文書第1版から第8販までに「頻度不明」と表示したことや,第9版に頻度として「1〜10%未満」と表示したことが相当性の範囲を逸脱したものであったとは認められないのであり,それが指示・警告上の欠陥となるとはいえない。
第1審原告らは,添付文書に早期診断と迅速な治療を可能とする初期症状を記載して患者指導を含めた注意喚起をすべきであったと主張するが,薬剤性間質性肺炎は抗癌剤等の投与によって生じる一般的な副作用であり,また,本件添付文書の説明は癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医を対象とするものであるから,この主張も理由がない。
本件添付文書の記載に指示・警告上の欠陥があるとの主張を基礎付けるものとして主張する第1審原告らのその他の主張も,本件添付文言の説明は癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医を対象とするものであることや,本件添付文書作成までに判明していた臨床試験の結果及び医学上の知見等を考慮したものとはいえず,いずれも採用することができない。
(6)指示・警告上の欠陥の有無に関する結論
以上の認定事実を総合すると,輸入承認時に作成された本件添付文書第1版について,これに指示・警告上の欠陥があったものと認めることはできず,その後の版である第3版についても,当該版の記載内容及び作成までの経緯からすれば,これに指示・警告上の欠陥があったものと認めることはできないものというぺきであり,このほかに,本件添付文書第1版又はその後の版の記載等に指示・警告上の欠陥があったことを認めるに足りる証拠はない。
- 添付文書の説明の対象者は癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であると認められる。
- 添付文書には、適応を「手術不能又は再発非小組胞肺癌」に限定する記載がある。
- 「手術不能又は再発非小細胞肺癌」の抗がん剤投与を行なう医師は癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医である。
- 癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であれば、添付文書第1版でも致死的な可能性を読み取ることが可能だった。
- 薬剤性間質性肺炎は従来の抗癌剤等で生じる一般的な副作用であり、癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医ならば死亡する可能性は承知できた。
- 『分子標的薬には従来の抗癌剤に生じる副作用が生じない』予備知識があっても、副作用を全く生じない医薬品ではないことは容易に理解し得た。
- 添付文書第1版の記載から間質性肺炎の致死性の可能性を読み取ることができない者は添付文書の記載を重視していなかったものというほかない。
- 素人ではないのだから、目に訴える表示方法を違法性の判断基準にするのはおかしい。
- 添付文書第1版の「重大な副作用」欄の4番目に掲げたことをもって、指示・警告上の欠陥があったものということはできない。
- 「重大な副作用」欄に記載すべきものは死亡又は重篤な機能不全に陥るおそれがあるものである。
- 4つの副作用は厚労省通達で「グレード3」=死亡又は重篤な機能不全に陥るおそれがあるものに区分されていた。
- 4つの副作用には、いずれも、死亡又は重篤な機能不全に陥るおそれがあった。
- 承認時において、他の副作用より優先して記載する根拠がなかった(因果関係があるとまではいえず「可能性ないし疑いがある」にとどまっていた。)。
- 評価対象臨床試験では発症例はなし。
- 評価対象臨床外試験では発症例は3例で死亡症例なし。
- 評価対象外の参考臨床試験で因果関係を否定できない死亡症例が4例あったが、他の併用剤による発症や他の有害事象による死亡も疑われた。
- EAP副作用情報では因果関係を否定できない死亡症例が9例あったが、以上と同様に、因果関係があるとまではいえなかった。
- 患者本人やその家族が分かるように記載することは医薬品の添付文書の趣旨,目的の範囲を趨える。
以上のような理由により、指示・警告上の欠陥はないとした。
EGFR遺伝子変異陰性の者
12 不法行為責任の有無
(1)適応限定義務について
第1審原告らは,イレッサはEGFR遺伝子変異陰性の者には効果がないのに,適応においてそのような限定をしていないから,適応限定義務違反の不法行為が成立すると主張する。 しかし,前記5(4)認定のとおり(19,20頁),イレッサの効能・効果の対象疾患の表示について第1審原告ら主張のような適応限定義務があると解することはできない。 しかも,日本人については,腫瘍縮小効果が生じる割合は14%程度にとどまるが,EGFR遺伝子変異が陰性であっても有効性が認められるのであり(前記6(2)ア(21,22頁)),第1審原告らの上記主張は,この点からも理由がない。
東京高裁は、EGFR遺伝子変異が陰性であっても有効性が認められるとしている。
国の責任
13 第1審被告国の責任の有無について
第1審原告らの第1審被告国に対する損害賠償糟求は,第1審被告会社には欠陥のある製造物であるイレッサを輸入・販売した製造物責任又は不法行為責任があるとの主張を前提とし,第1審被告国は適切な規制権限を行使しないで輸入承認をし,その後も適切に規制権限を行使しなかったために第1審原告らが損害を被ったのであるから,第1審被告国は第1審原告らに対し,国家賠償怯1条1項に基づき損害賠償責任を負うとするものであるが,第1審原告らが第1審被告会社に対して主張する上記前提事実が認められないことは,前記5ないし12認定のとおり(16〜S3頁)であるから,第1審被告国の輸入承認及びその後の規制権限不行使が違法であるかどうかについて論じるまでもなく,第1審原告らの第1審被告国に対する損害賠償請求は理由がない。
製造物に欠陥がないのだから、国にも責任はないとした。
結論
14 結論
以上の認定判断によれば,第1審原告らの各請求は,いずれも理由がないから棄却すべきであり,原判決中第1審原告●●●●及び第1審原告●●●●の請求の一部を認容した部分は不当であって。 取消しを免れない。
よって,第1審被告らの控訴に基づき,原判決主文第1項及び第2項を取り消し,第1審原告●●●●及ぴ第1審原告●●●●の第1審被告らに対する各鶴求をいずれも棄却し,第1審原告らの各控訴は理由がないからこれらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高裁は、以上のような理由により、原告側の請求を全て棄却している。
イレッサ投与と死亡の因果関係
死因とイレッサの副作用との因果関係があるとまではいえない
イレッサ控訴審、原告が逆転敗訴 - 中日新聞
とする報道は誤報のようだ。
4 イレッサ投与と本件患者らの死亡との因果関係
亡●●●●●及び亡●●●●,については,前記3(1)及び(3)認定の事実(9〜11,13〜15頁)に基づいて判断すれば,イレッサ投与と死亡との間の因果関係を肯認するのが相当であり,この認定を覆すに足りる証拠はない。
しかし,亡●●●●にはKL−6及びβ−Dグルカンが共に高値であるというニューモシスチス肺炎と整合する臨床検査値がある一方,この臨床検査値は間質性肺炎とは整合せず,さらに,病理検査(喀痰検査)により真菌の存在が確認されたこと及び同人の症状の経過を総合すれば,同人はニューモシスチス肺炎により死亡した蓋然性が最も高い一方,間質性肺炎で死亡したものと認めることはできず,同人の死亡とイレッサ投与との間に因果関係があるということはできないものというべきである(前記3(2)(11〜13頁))。 亡●●●●の死亡原因はゲフィチニブによる急性肺障害(間質性肺炎)であるとする甲個②2及び5の見解は,前記3(2)認定の事実に照らし採用することができない。
したがって,亡●●●●がイレッサの投与により死亡したことを前提とする第1審原告●●●●の請求は,その余の争点について判断するまでもなく理由がない。
薬害イレッサ東日本訴訟 東京高裁判決 - 薬害イレッサ弁護団(P.15,16)
東京高裁判決では、1名の患者を除いて、原告患者の死亡とイレッサの副作用との因果関係を肯定している。
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