イレッサ訴訟原告が医師を訴えない謎
医師の義務
最高裁では
医療水準は、医師の注意義務の基準(規範)となるものであるから、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものではなく、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない。
医師が医薬品を使用するに当たって右文章に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである。
平成4(オ)251 損害賠償請求事件 平成8年01月23日 最高裁判所第三小法廷
必要に応じて文献を参照するなど,当該医師の置かれた状況の下で可能な限りの最新情報を収集する義務があるというべきである。
平成12(受)1556 損害賠償請求事件 平成14年11月08日 最高裁判所第二小法廷
と判示されているように、医師には添付文書等に従う義務があり、かつ、可能な限りの最新情報を収集する義務がある。
この判例は、医師が当然有するべき技量に基づいた注意義務を求めただけであり、決して、特別なことを求めているわけではない。 添付文書に書いてある「使用上の注意事項」の重要性を認識し、合理的理由なく軽視してはいけないと肝に命じるくらいは素人にも出来ることである。 「文献を参照する」ことも取り立てて難しいことではない。 素人にも出来ることを怠ったなら、それは、誰が見ても、医師の過失だろう。
イレッサ“薬害”訴訟で医師の過失が問われていないのは、医師に過失がなかったからでも、医師の過失責任を立証することが難しいからでもない。 ただ、遺族が、医師を執拗に擁護し、意図的に医師を被告から外す選択を行なっただけに過ぎない。 この訴訟の原告の場合は、判例違反がある医師の過失は明らかであり、また、医師の行為が直接的に結果を引き起こしているから、過失と損害の間の因果関係の立証も楽である。 国や製薬会社の責任を問う場合には因果関係の立証が困難であり、明らかな医師の過失によって立証の困難さはさらに上がり、医師を訴えるよりも勝訴確率は確実に下がる。 それでも、何故か、原告は医師を訴えない選択を行なったのである。
医師による危険回避可能性
以下は、第2版までの添付文書で適切対応をした事例である。
○○さんにイレッサを勧めたのは、「夢の新薬誕生」という記事を目にした夫の○○さんでした。
開発されたばかりのイレッサを服用できないか。 ○○さんは尼崎市内にある総合病院に向かいました。 この病院では2年前から、イレッサを初めて服用する患者には、必ず4週間入院してもらう体制をとっています。 医師が、副作用の症状をいち早くつかむためです。 その結果、これまでにイレッサを服用した患者は40人。 その内2人に間質性肺炎が見られましたが、いずれも迅速な対処で回復。 最悪の事態を防いでいます。
○○さんの主治医、腫瘍内科医の後藤浩之医師にとって○○さんは、初めてイレッサを処方する患者でした。 しかし真っ先に間質性肺炎のリスクについて説明しました。
「私は呼吸器専門で、薬剤性の間質性肺炎の症例を見ているんですけども、かなり起こると命が危ない。 風邪薬でも起こす人は起こします。 やはりイレッサに限らず新しい薬の場合は、そのことを念頭に置いておかないといけないと思います。」(後藤医師)
2002年10月。 主治医の説明を聞き納得して薬を飲み始めた○○さん。 しかし、その矢先、衝撃的なニュースが飛び込んできました。 イレッサを服用した患者13人が副作用で死亡、という報道でした。 瞬く間に、患者の中で不安が広がり始めました。 期待していた薬への絶望感。 一方で、被害が拡大すれば大事な選択肢であるイレッサが使用中止になるのではないかという切実な声もあがっていました。
がんサポートキャンペーン第3回揺れる抗がん剤イレッサ(http://www.nhk.or.jp/heart-net/support/yotei/050214.html)
「2002年10月」の何日から「薬を飲み始めた」かは書かれていない。 しかし、次のような記述から、緊急安全性情報より前に「真っ先に間質性肺炎のリスクについて説明」を受けたと推定できる。
- 「薬剤性の間質性肺炎」が「かなり起こると命が危ない」前提で「真っ先に間質性肺炎のリスクについて説明」を受けた。
- 説明されたリスクの度合いから見て、使用を即断したとは考え難く、本人と「夫」もそれなりに迷ったと推測できる。
- 「薬を飲み始めた」後に「イレッサを服用した患者13人が副作用で死亡」という「衝撃的なニュースが飛び込んできました」。
人数から見て「衝撃的なニュース」は緊急安全性情報に関する物であろうと推測される。 だとすれば、「尼崎市内にある総合病院」の後藤浩之医師は、緊急安全性情報よりも前に、「初めてイレッサを処方する患者」に対して適切な対応を取っていたのである。 また、呼吸器の専門医に「薬剤性の間質性肺炎」が「かなり起こると命が危ない」「風邪薬でも起こす人は起こします」とする知見があるなら、重大な副作用欄への記載だけで十分に間質性肺炎の危険性は読み取れるはずである。 よって、第2版までの添付文書で間質性肺炎の危険性が読み取れなかったとは言えない。
医療に限らない常識
医療に限らない一般論であるが、知識や経験が足りないことについてぶっつけ本番が許されるのは、次の全ての条件を満たす場合だけである。
- 他人に損害を与えないこと
- 人の命や健康に悪影響がないこと
ただし、現実には、これらの条件を満足できない場合であっても、ぶっつけ本番に頼らざるを得ない場合もある。 しかし、その場合も、次の全ての条件を満足する場合にだけ、ぶっつけ本番が許されると解するべきである。
- 実績等が極めて少ない等の理由により、実施にはぶっつけ本番が避けられないこと
- 新たな治療法を必要とする難病の治療法の開発等、ぶっつけ本番に挑戦するだけの必要性があること
- 既に危険性を最小限に抑えるあらゆる努力を果たしていて、本番で試す以外に危険性を下げる余地がないこと
- 危険に晒される本人に情報を適切に伝えた上で、本人がそれを希望すること
以上のことを踏まえると、知識や経験が足りない医師がぶっつけ本番でイレッサを投与すべきでないことは常識である。
- イレッサの副作用対策に詳しい医師がおり、知識や経験が足りない医師がぶっつけ本番での危険を冒す必要はなかった
- 文献を調べる、詳しい医師に効く、製薬会社に問い合わせるなど、足りない知識を補完する余地があった。
このような状況を考慮すると、ぶっつけ本番でイレッサを投与したならば、不必要な人体実験を行なったことになる。 人体実験も、医薬品の開発などでは避けられないため、必要性があればやむを得まい。 しかし、イレッサ投与に関して医師の足りない知識や経験を補うために、人体実験を行なう必要は全くない。 必要のない人体実験で患者の命を危険に晒したのだとすれば、その医師の責任は極めて重い。
イレッサの間質性肺炎は重大な副作用欄に書いてあったのだ。 百歩譲って、「確実に危険」と読み取れなかったとしても、「確実に安全」とする根拠もなかったのである。 このような場合に、危険性・安全性の裏付けを取らずに、ぶっつけ本番を強行したなら、強行した者の責任が問われるのは当然である。 各人が自分の仕事に当てはめて考えてみれば良い。 マニュアルに書いてある危険性について、未確認のままぶっつけ本番を強行したなら、たとえ、軽微な被害であっても、確実に上司から説教されるだろう。 重大な被害が出れば説教程度では済まず、場合によっては、刑事責任まで問われかねない。 医師でなくてもそこまでの責任を問われるのだから、人の命を預かる職業である医師が責任を問われないはずがない。
支離滅裂な原告の主張
原告は真実を明らかにしたいと言う。 それなのに、患者の生死に最も高い比率で関与した張本人である医師は訴えない。 本当に真実を明らかにしたいなら、どうして、最も真相に近い人物を訴えないのか。 医療用医薬品の不正投与による副作用死の場合は、国と医師と製薬会社の三者による共同不法行為とみなされる。 共同不法行為では不法行為者は不真正連帯債務を負うので、損害賠償だけが目的ならば、法的責任が認められる可能性が高い相手を選んで裁判を起こせば良い。 しかし、真実を明らかにすることが主目的である場合は、全員を訴えないと真実が闇に葬り去られる危険性がある。 何故ならば、一部のみを選択して裁判を起こしても、不法行為者間の過失割合が明らかにならないからである。 そして、訴えが通った場合には、全員分の賠償金を得ることができるため、他の不法行為者に対して損害賠償請求ができなくなる。 他の不法行為者を訴えることができるのは、敗訴した不法行為者が他の不法行為者に求償裁判を起こすときだけである。 そして、敗訴した不法行為者が求償を断念してしまえば、真実が闇に葬り去られてしまうのだ。
以上のことは、弁護士に相談した時点で、当然、教えてもらえることである。 それでも、医師を訴えないのならば、原告は、真相を知りたいのではなく、復讐がしたいだけなのだ。 そして、その復讐相手は誰でも良いのである。 国や製薬会社のせいにして叩くのが楽だから、そうしているに過ぎない。 そのくせ、一番叩き易いはずの医師は叩かない。 弁護団から国への反論でも執拗に医師を庇っている。
原告は、素人基準を持ち出して、素人が「劇的な効果&副作用は皆無」と勘違いするのは当然だと言う。 確かに、当時の状況では、素人がそう勘違いするのは仕方がないだろう。 素人が直接医薬品を購入し、素人の判断で投与したなら、素人の勘違いは致命的な結果を産む。 しかし、イレッサは、今も昔も医療用医薬品であり、医師でなければ投与できないはずである。 いったい、医師は何処に行ってしまったのだろう。
原告は、主治医が「イレッサ服用前に重大な副作用があるという説明をせず」「副作用がほとんどない旨の説明をした」「イレッサ服用後も十分な経過観察を行わなかった」としている。 「何だ、ちゃんと医師が居るじゃないか」と思ったら、何故か、原告は国や製薬会社のせいだと主張している。 どうして、全て医師がやったことなのに、国や製薬会社のせいなのか。 原告は、素人基準を持ち出すばかりで、医師基準の話を1つもしていない。 国や製薬会社のどんな行為が、医師の間違った説明や間違った措置を引き起こしたのか。 その原因も因果関係も全く説明されていない。
原告医師の責任
原告は、華々しい成果をアピールした医療関係者、夢の新薬ともてはやしたマスコミ、それらに踊らされた患者や家族を批難する。
学術の対談記事と称して専門家を用いたり、有効性のみのデータをマスコミに流して社会の信用を得る。患者個人や患者会のサポート・交流と表面上は取り繕いながらシンポジウムや学集会などに招き、謝金や交通費名目で援助しながら宣伝・販促に巧みに利用する。このような方法は、過去に起された薬害においても繰り返し用いられて来ましたが、いつの時でも・・利用されていたと知ったマスコミは、広告費等会社の利益には必要であり記事のバランスは重視していると正当化し、利用されていたと知った専門家は、当時の医学では間違ってはいないと主張する。
イレッサとは-イレッサ薬害被害者の会(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?homepage3.nifty.com/i250-higainokai/subpage2.htm)
原告は、そうした「バランスを欠いた情報提供(学術記事と広告宣伝)」のせいで、間違った治療法に誘導されて、家族が死んだという。
しかし、本当にそうだろうか。 イレッサは医師の処方が必要な医薬品であったし、今でもそうである。 だから、どんなに「バランスを欠いた情報提供(学術記事と広告宣伝)」で夢の新薬と持ち上げられていても、医師が一言「使えません」と言えば、患者に投与されることはないのである。 患者や家族が「バランスを欠いた情報提供(学術記事と広告宣伝)」に踊らされてしまった時に、最後の防波堤となるのは医師の役目だろう。
本当に「過去に起された薬害においても繰り返し用いられて来ました」が正しいなら、その事実は、当然、公知の事実のはずである。 ということは、「バランスを欠いた情報提供(学術記事と広告宣伝)」を鵜呑みに出来ないことは、医師ならば当然知っているのである。 そもそも、医学の世界では査読のある論文でさえ疑ってかかるべきなのが常識であり、医師が「学術記事と広告宣伝」を鵜呑みにすることはあり得ない。 医師が事前に情報を調べ、新しい原理の新薬の危険性を正しく理解し、自分の力量を正しく理解して使用の有無を決定し、副作用対策を万全に整え、万が一の場合に考えうる最善の手段を講じることができるならば、原告の言うようなことは起こり得ないのである。 どんなに「バランスを欠いた情報提供(学術記事と広告宣伝)」が流布されようとも、医師免許を持った医師が治療を行う限り、医師がちゃんと仕事をしていれば、それによって間違った治療法に誘導される危険性は殆どない。 にもかかわらず、それが間違った治療法に誘導された結果だと言うなら、まず、医師の行為が適切だったかどうかを検証する必要がある。 そこで、東日本訴訟の原告ついて徹底的に検証してみる。
実名が出ている患者
1週間ほどたった8月15日、主治医から「イレッサの服用が今日からできますよ」と言われた。
“夢の新薬”ともてはやされたイレッサの「薬害」を裁判で問う:届け!がん患者たちの声:がんサポート情報センター(http://www.gsic.jp/society/st_05/13.html)
早速主治医に話しをしてみた所、まだ保険適応になって いないので1錠9000円と自費ではあるが申請をすれば使用可能であることを知り、早速お願いして、平成14年8月15日から1日1錠、イレッサの服用が始まりました。
平成16年(ワ)第25016号薬害イレッサ損害賠償請求事件意見陳述書(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?homepage3.nifty.com/i250-higainokai/kouhan-chikazawa-iken.pdf)
イレッサが保険適用になったのは2002年8月30日である。 このケースでは、保険適用前からイレッサの服用を始めているのである。
○○子さんとともに、服用の同意書の説明と副作用に関しての注意などの説明を聞いてサインしたが、「副作用に関しての説明といっても、単にカゼ薬に書かれてある添付文書と同じようなことで、それほどたいした副作用はないと思いますよ、といったような話でした」と○○さんは振り返る。
“夢の新薬”ともてはやされたイレッサの「薬害」を裁判で問う:届け!がん患者たちの声:がんサポート情報センター(http://www.gsic.jp/society/st_05/13.html)
私は医師に相談し娘がイレッサを服用できるように手続きしました。 「それほど大した副作用はないと思いますよ」
薬害イレッサの真実-薬害イレッサ弁護団(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?www.iressabengodan.com/data/comic.pdf)
「過去に起された薬害」を省みれば、承認されたばかりの新薬に未知の重篤な副作用が隠されていることは当然予想すべきことだろう。 とくに、保険適用前であり、市場で使用された実績が不十分な新薬ともなれば、慎重になって然るべきである。 それなのに、この医師は「それほど大した副作用はないと思いますよ」といい加減な説明を行なっている。
第7 添付文書の記載の変遷 イレッサの輸入承認がなされた2002年7月時点での添付文書には、間質性肺炎に関する記載はわずかに
「重大な副作用 間質性肺炎(頻度不明):間質性肺炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと」
との記載しかなかった。
平成16年(ワ)第25016号薬害イレッサ損害賠償請求事件訴状(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?homepage3.nifty.com/i250-higainokai/2004-11-25-tokyo-sojyo.pdf)
何と、添付文書には「重大な副作用 間質性肺炎(頻度不明(注1)):間質性肺炎があらわれることがある(注1)第II相国際共同臨床試験及び米国第II相臨床試験(いずれも本剤を250mg/日投与群)以外でのみ認められた副作用は頻度不明とした。」と書いてあったのである。 製薬会社は、事実を包み隠さずに、治験外使用で間質性肺炎の発症例があり、間質性肺炎の発症可能性がある(100%確実に発症するわけではない)ことを添付文書の重大な副作用欄に明記していたのである。 それなのに、この医師は、「それほど大した副作用はないと思いますよ」といい加減な説明を行なったのである。
しかし…2002年10月3日の定期診察日
肺に気になる影があるので念のため今から入院してください
薬害イレッサの真実-薬害イレッサ弁護団(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?www.iressabengodan.com/data/comic.pdf)
原因も分からないまま入院3日目には娘の呼吸は荒くなり容態は分刻みで悪化していきます
薬害イレッサの真実-薬害イレッサ弁護団(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?www.iressabengodan.com/data/comic.pdf)
そして12日目のこと
「新聞はご覧になられましたか?」
「新聞??」
「お嬢さんはどうやらイレッサの副作用による間質性肺炎だと思われます」
薬害イレッサの真実-薬害イレッサ弁護団(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?www.iressabengodan.com/data/comic.pdf)
その2日後…なすすべもないままに娘のあれだけ荒かった呼吸は小さくなり静かに旅立っていきました
薬害イレッサの真実-薬害イレッサ弁護団(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?www.iressabengodan.com/data/comic.pdf)
10月3日、定期の外来の診察日で病院に出掛けレントゲン写真を撮り診察が始まって直後、このまますぐに入院をするように言われました。何がどうなったのか全く分かりませんでした。
いつも通りに診察を受けに来ただけなのに、慌しく車イスまで用意されて個室まで運ばれてすぐに酸素マスクを付けるように言われ、只ならぬ雰囲気を感じ主治医に説明を求めましたが、主治医は「肺に少し気になる影があるので念の ために検査入院をして貰います」との説明のみでした。
緊急の入院から3日目には自呼吸が出来ないほどの状態となってしまい、それ でも娘は何とか頑張って回復させるのだと、少しでも食事をしようと努力して食べ物を口に運んでいました。5日目には、酸素を求めて必死になってもがき苦しむ様に何とかして欲しいと医師に哀願しましたが、まだ検査の結果が出ていないとの回答のみで、為す術がないと言った様子でした。
横になってほんの少し休むことも、寝ることも出来ずにベットに座ったままの娘三津子の頑張りも力尽きてしまい、それから2日目の平成14年10月17日、「ごめんね、パパ」と最後の言葉を残して31歳の若さで静かに旅立って行きました。
緊急の入院を言われてから亡くなるまでの2週間があまりにも不自然な容態の急変と、毎日地獄のような娘の苦しみに納得出来ず大きな疑問を感じましたので、娘の○○子にはこれ以上辛い思いをさせることには申し訳ない思いで一杯でしたが心の中でごめんね、ごめんね、と誤り続けながら主治医に解剖をお願いしました。その結果は剖検報告書の最後に「死因は呼吸不全と考える。他の原因は見出されず、ゲフィチニブとの関連が充分にあり得る。」と記されていました。
平成16年(ワ)第25016号薬害イレッサ損害賠償請求事件意見陳述書(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?homepage3.nifty.com/i250-higainokai/kouhan-chikazawa-iken.pdf)
意見陳述書は日数の辻褄が合ってない。 「10月3日、定期の外来の診察日」に、「慌しく車イスまで用意されて個室まで運ばれて」則入院したのならば、入院「5日目」は10月7日のはずである。 初日をカウントしなかったとしても、10月8日であろう。 「それから2日目」は「平成14年10月17日」であるはずがない。 おそらく、これは、書きかけの原稿から記述を一部削除したことによって、日数のカウントが飛んでしまっているのだろう。 弁護団の漫画と比較すると、「12日目」の記述が抜けていると仮定すれば、両者の年月日がピッタリと一致する。 よって、弁護団の漫画の日付を正確な日付として扱うものとする。
発売前の新薬を投与して容態が悪化したのに、どうして、新薬の副作用を疑わないのだろうか。 新薬の添付書類を見れば、「肺に少し気になる影」が間質性肺炎である可能性に気づいて然るべきではないか。 それなのに、副作用による間質性肺炎の可能性に気づきもせず、新聞報道を見て初めて気づくのはおかしくないか。 この医者は、一体、12日間も何をしていたのだ。 もっと早く副作用による間質性肺炎であると分かっていたなら、この患者の命を救えたのではないか。 添付文書を見た段階で、それら副作用が起きた場合の対処方法も頭に叩き込んでおくべきではないのだろうか。 それが出来ないならば、たとえ、患者から懇願されても、出来ないことには手を出すべきではない。 ましてや、「それほど大した副作用はないと思いますよ」と軽々しく言ってはならない。
その他の患者
原告最終準備書面(第3分冊) - イレッサ弁護団には次のような疑問点がある。
- 被害者Bについて
- 当時の添付文書には「少なくとも投与開始後4週間は入院またはそれに準ずる管理の下で、間質性肺炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うこと」「本剤の投与にあたっては、臨床症状(呼吸状態、咳および発熱等の有無)を十分に観察し、定期的に胸部X線検査を行うこと。また、必要に応じて~などの検査を行い、急性肺障害、間質性肺炎等が疑われた場合には、 直ちに本剤による治療を中止し、ステロイド治療等の適切 処置を行うこと。」と書かれているが、適切な措置は取られたのか?
- 投与4日目には、2日間の外泊許可を出して、外泊2日にはドライブまでしている。ドライブ中に容態が急変したら適切な対応を取れるのか?
- 投与6日目には「右下葉湿潤が増悪し,肺炎として治療を開始」しているのに、2日後に外出許可を出している。外出の翌日に間質性肺炎と診断されたが、「右下葉湿潤が増悪」が副作用の間質性肺炎でないかどうか適切な診断をしたのか?この状態で容態の急変の可能性はなかったのか?
- 「イレッサを中止後,ステロイド・パルス療法等を実施した」とあるが何日から実施したのかの記載がない(他は細かい日程が書いてあるのに、ここだけ年月日が抜けているのは不自然)。
- 当時の添付文書には「少なくとも投与開始後4週間は入院またはそれに準ずる管理の下で、間質性肺炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うこと」「本剤の投与にあたっては、臨床症状(呼吸状態、咳および発熱等の有無)を十分に観察し、定期的に胸部X線検査を行うこと。また、必要に応じて~などの検査を行い、急性肺障害、間質性肺炎等が疑われた場合には、 直ちに本剤による治療を中止し、ステロイド治療等の適切 処置を行うこと。」と書かれているが、適切な措置は取られたのか?
- 被害者Dについて、
- 間質性肺炎の既往患者に対して重篤な間質性肺炎が起き得る薬を投与することによって「間質性肺炎が増悪する危険性」は医師にとって予測不可能か?
これでは医師に過失がなかったことを証明できておらず、「高度の蓋然性」さえ満たしていない。
原告側は、添付文書等の書き方が適切でないことにより、製造物責任法の欠陥商品であると主張した。 確かに、一般用医薬品であったなら、重篤な副作用が分かりにくい書き方は、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いている」と言えよう。 しかし、イレッサは、医療用医薬品であり、一般用医薬品としての使い方は「通常予見される使用形態」を大きく外れている。 添付文書等の書き方に問題があっても、添付文書に重篤な副作用としての間質性肺炎がある旨の必要な記載がある以上、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いている」とまでは言えない。
原告側は、医師の説明内容は十分でなかったと再三主張している。 しかし、何の根拠も示さずに、それが製薬会社の誇大広告・宣伝による影響だと断定している。 特に酷いのは以下の部分である。
先に述べたように,Bの主治医である●●医師は,診断の当初から,イレッサについて,その有効性を強調し,危険性が他剤よりも低いとの説明を繰り返していた。
2002(平成14)年11月7日の説明の際,「イレッサは問題があったのでは,だから避けたい」とイレッサの使用に不安を述べた原告Aに対し,●●医師は,「問題のあったことは0.3%ないし1%」などと説明していた。
さらに,イレッサ投与のために入院した2003(平成15)年1月28日には,●●医師は,「イレッサは,がん細胞を狙い撃ちする抗がん剤で,20%~30%の人に有効ですが,最近,重大な副作用として間質性肺炎が問題になっています。0.2~0.4%の人が命を落としました。今回は,入院して十分な注意をしながら治療をします。」と説明した。
これらの説明の具体的数字の根拠は定かではないが,有効性を強調する一方で,危険性についての説明が適切かつ十分になされていないことは明らかである。
このように,イレッサに関する被告会社の過大広告・宣伝による影響は大きく,それを十分に払拭すべく被告会社が手段を尽くさなかったことにより,イレッサの有用性・安全性に関する誤った認識は,この当時においても医療の現場に行き渡っていた。
そして,主治医の●●医師から,上記のような説明を受けた結果,原告Aは,20%~30%の患者に延命効果があるのだと理解し,副作用としては軽い発疹程度と聞き,安心し,Bと「ものすごく喜んだ」旨,本法廷において陳述している。
原告最終準備書面(第3分冊)-イレッサ弁護団(http://iressa.sakura.ne.jp/jump.cgi?iressabengodan.com/data/saijun3.pdf)
どうして「これらの説明の具体的数字の根拠は定かではない」のに「イレッサに関する被告会社の過大広告・宣伝による影響は大きく」と言えるのか。 「定かではない」なら、何の影響かも分からないのではないのか。 「20%~30%」が奏効率のことを指しているであろうこと、その値が奏効率であると主治医が認識しているであろうことは、疑いの余地がない。 とすれば、奏効事例を「有効」と称したのは明らかに主治医の判断によるものであり、それが「延命効果」と誤認されたのは明らかに主治医の自己判断が原因であろう。 それなのに、どうして「イレッサに関する被告会社の過大広告・宣伝による影響は大きく」と言えるのか。
以上、患者への説明の不備、および、患者を死なせたことのどちらにおいても、「通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる」だけの「高度の蓋然性」が全く証明されていない。
各種意見
添付文書の記載内容に対して、次のような反論もある。
間質性肺炎(頻度不明)はほとんどすべての薬の能書に出てくるフレーズです。
ふつうの抗癌剤とは違うのを売りにした新種薬でこれを特別に警戒しようとは
誰も思いますまい。一例も出なかったような書き方ですし。
イレッサと副作用-癌掲示板(http://gankeijiban.com/bbs/read.cgi?bbs=020mune&key=1005825428&st=514&to=514&nofirst=true)
しかし、イレッサと風邪薬の副作用(間質性肺炎)にも書いたとおり、使用実績の多い「ほとんどすべての薬」における「頻度不明」と新薬の「頻度不明」は全く意味が違う。 確かに、多数の使用実績を経ても、なお、「頻度不明」となっているならば、それは、頻度が計測できないほど稀な事例であると推定するのも間違いではないだろう。 だが、使用実績のほとんどない新薬であれば、データ不足で「頻度不明」となっている可能性もあり、稀な事例であると断定する根拠は全くない。 「一例も出なかったような書き方」とは、この医師の勝手な思い込みであり、注意書きには治験外で認められた副作用であることが明記してある。 そもそも、本当に「一例も出なかった」なら重大な副作用欄に書いているはずがないのである。
「ふつうの抗癌剤とは違うのを売りにした新種薬」とは全く事情の違う「ほとんどすべての薬」の例は、全く、言い訳にもならない。 「ふつうの抗癌剤とは違うのを売りにした新種薬」であるからこそ、未知の重篤な副作用について警戒する必要があるはずである。 そして、警戒しやすいようにするために、実際に発症が確認された副作用であることが明記されているのである。 明記されていない副作用の可能性も考慮すべきなのだから、当然、明記されている副作用は警戒すべきであろう。 そうでなくても、使ったことのない薬の使用には慎重であって然るべきである。 初めて使う薬に「ほとんどすべての薬」と同じ副作用が書いてあったとしても、その発生頻度までが「ほとんどすべての薬」と同じとは限らない。 発生頻度は1万倍も差があるかも知れないのに、どうして、「ほとんどすべての薬の能書に出てくるフレーズ」が言い訳になるのか。 使用実績に基づいて添付文書を軽視するのは分かるが、同じ副作用が書いてあることは軽視する理由になっていない。 最高裁判例では「平均的医師が現に行っている医療慣行」でさえ、添付文書を軽視する理由にはならないとしているのだ。 それなのに、どうして、非科学的な勘違いで添付文書を軽視することが許されると言うのか。
医療用医薬品が医師の指示や処方を必要とするのは、高度な医療知識に基づいて使用する必要があるからであって、名義だけ医師であれば良いわけではない。 「バランスを欠いた情報提供(学術記事と広告宣伝)」を鵜呑みにし、「ほとんどすべての薬の能書に出てくるフレーズ」だからと添付文書を軽視し、新しい原理の新薬の危険性を理解せず、副作用対策の準備を怠り、自分の力量を弁えずに安易に投与するのならば、その程度のことは医師資格のない一般人にも十分出来る。 むしろ、リスク・マネジメントを勉強した一般人の方が、添付文書を重視するだろうし、実績のないことの危険性も理解するだろうから、この自称医師よりも遥かにマシな投与ができるのではないか。 一般人にも劣ることしか出来ない名ばかりの医師はサッサと廃業すべきだろう。 尚、この自称医師はその後の投稿で医学的にも論理的にも無茶苦茶な発言をしている。 こんな馬鹿げた意見よりは、次のような見解の方がよっぽどマトモだろう。
イレッサ承認当初の初版添付文書では「重大な副作用」欄の1番目に下痢が挙げられ、間質性肺炎は4番目の記載だった。
裁判所の所見は「下痢よりも重要でないものと読まれる可能性があった」と指摘したが、池田弁護士は「添付文書は医師向けのもの。4番目だから安心と考える医師はいない」と、初版段階から注意喚起が適切だったとの認識を改めて示した。
イレッサ訴訟・早期解決に暗雲、原告は強く反発-MSN産経ニュース(http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110124/trl11012423510114-n1.htm)
がん患者、特に末期のがん患者にとって間質性肺炎が場合によっては致死性のものであることは、医師にとって周知の事実です。副作用情報の4番目に記載してあったとしても同じことです。
イレッサ訴訟和解勧告に関する考え方-厚生労働省(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000011b50-img/2r98520000011b6h.pdf)
これに対し、国は「副作用欄に記載があれば『致死的となり得る』という意味」と反論。
「薬事行政の根幹」と反発 イレッサ訴訟、強硬姿勢の国-中国新聞(http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201101290077.html)
重大な副作用の個々の内容に優劣はなく、記載されていれば、医療従事者として順番は関係ない(4番目だから問題ではない)
イレッサの和解勧告案に対する国立がん研究センターの見解(http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226502687444)
今回の勧告では、副作用の記載順序に言及されているようですが、記載順序にかかわらず医師や薬剤師は効果のみならず副作用について説明を患者さんに行い、了解を得て治療は開始されるのが医療の現場の状況であります。したがって本勧告は、本薬剤を使用した医師の専門家としての役割を軽んじるとも受け取れます。
肺がん治療薬イレッサの訴訟にかかる和解勧告に対する見解-日本臨床腫瘍学会(http://jsmo.umin.jp/oshirase/20110124.html)
いずれの薬の場合も限られた少数の症例による治験の結果を基に申請され、審査されるわけですが、この段階で生理的にも遺伝的にもまた疾病の程度も多様である患者に使われた時の重篤な副作用を全て予測することは困難です。添付文書上の副作用の順番が議論されていますが、「重要な副作用」への記載順番で将来起こる可能性を全て予測できれば、こんな楽な話はありません。限られた症例からは未知の重篤な副作用が多発することを予測すること、ましてやその順番を明らかにすることは極めて難しいと言わざるを得ません。それを行政や承認審査の部会や審議会の責任にすることは妥当ではありません。イレッサの場合が正にそれに当たります。
イレッサ和解提案についての見解-社団法人日本病院薬剤師会(http://www.jshp.or.jp/kouhou/iressa.pdf)
重篤な副作用を防ぐためには医師、薬剤師の責任は極めて重いことを再認識することが重要です。特に病棟で医療安全のために活動することがますます求められる薬剤師の責任は重大です。薬害裁判をみても、医療関係者は殆どその責任を問われていませんが、かえって違和感を覚えます。
イレッサ和解提案についての見解-社団法人日本病院薬剤師会(http://www.jshp.or.jp/kouhou/iressa.pdf)
「添付文書は医師向けのもの。4番目だから安心と考える医師はいない」に関しては、製薬会社の言い分は100%正しい。 大阪地裁判決でも認めているとおり、「下痢」は致死的な副作用である。 致死的な副作用だからこそ、重大な副作用の欄に書いてあるのである。 よって、相対的に「下痢よりも重要でないものと読まれる」としても、それは、致死的でないことを意味しない。 よって、正常な医師ならば「下痢よりも重要でない」ことを理由として、「間質性肺炎」が致死的でないとは判断しない。 そもそも、副作用の危険性は、その症状の性質によって判断するものであって、書かれた順番で判断するものではない。 大阪地裁判決でも認めているとおり、承認当時の間質性肺炎の発生頻度は不明であった。 発生頻度からみれば、1〜10%未満の下痢と肝機能障害が頻度不明の間質性肺炎より先に書かれていることは全くおかしくない。 以上のとおり、「4番目だから安心と考える」医師の方が間違っている。
原告のうちの1名の治療内容について
肺炎を誘発したのはイレッサかもしれませんが、より多くの原因は治療方針にあった事が「証言」されています。
縦隔への(恐らく?)根治的な照射線量ならば抗癌剤治療は最低でも3ヶ月、できれば半年は間隔をあけ慎重な投与をすべきです。
間質性肺炎と明記されている抗癌剤の初回治療で「30日分渡して退院」などあり得ません。
国内臨床試験(9)イレッサ訴訟大阪地裁の判決について-国内臨床試験(9)イレッサ訴訟大阪地裁の判決について|転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ
と医師の過失責任を問う意見もある。
結論
製薬会社は迅速な報告を怠ったとされており、迅速な報告があれば救えた命があったのも事実だろう。 迅速な報告があれば、この患者のケースでも助かった可能性はある。 そうした理由で、製薬会社にも責任の一端はあると言えるかも知れない。 しかし、最高裁判例で判示された医師の義務に従っていないのだから、やはり、このケースで一番悪いのは、どうみても医師である。 原告の家族の主治医が「使用上の注意事項に従わない特段の合理的理由」は何処にもない。 よって、この最高裁判例に従えば、原告の家族の副作用死は主治医の過失と推定されるのである。 また、医師には、可能な限りの最新情報を収集する義務があるという。 素人以下の判断しかできないなら、明らかに、原告の家族の主治医はこの義務に違反している。 よって、この最高裁判例でも同様に、主治医の過失と推定される。 だから、原告は、国や製薬会社ではなく主治医を訴えるべきだろう。
不適正使用の実態
尚、原告の事例はどうか知らないが、明らかに倫理に反するインチキ療法を実践する医師によるイレッサ使用例も少なくない。 治療データを捏造して逮捕された近畿大学の某元教授のインチキ診療所でもイレッサを使っていた。
国立がんセンター中央病院内科医長を努めたこともある渡辺亨氏(がんセンター在籍時に出演した番組)は次の様に主張している。
新薬導入直後というのは、とかく過剰な期待があります。 イレッサ(ゲフィチニブ)は、世界初の肺がんの分子標的薬剤ということで、夢の薬みたいな扱いで、行政も、医療界、患者も、熱病にかかったように暴走しました。 冷静だったのは製薬企業だけだったかもしれません。 それで、数々の特例を設けて、市販される前に、自費で使用できるような行政の仕組みまで、つくられ、その間に、とんでもない不適切使用が横行しました。
当局って呼ばないで-オンコロジストの独り言(http://watanabetoru.net/2007/09/29/)
しかし、だ、この6ヶ月が、まるで野放し状態になったのであった。 ここは、医療界は深く反省すべきである。 状況はこうだ。 1錠当たり8000円払えば、打つ手がないといわれた末期のがん患者に、しかも、肺癌だろうが、大腸癌だろうが、乳癌だろうが、胃癌だろうが、夢の薬が手に入るらしい、ということで、癌治療医だろうが、癌のことはあまりよくしらない医師だろうがイレッサを処方した。 がん患者が知り合いの歯科医に頼んで処方してもらった、という噂もあった。 このような状況で死亡者がたくさん出たということだが、イレッサの副作用の患者もいただろうが、末期の癌で死亡した患者も相当数いたのは確実である。 新薬がでると、わらをもすがる気持ちで、それを求める、という気持ちは、誰にでもあるだろう。 ただ、コントロール不能に陥った6カ月間で、今まで、「夢のくすり」ともてはやしていたマスコミも、がらりと態度を変え「薬害の犯人探し」というような論調になった。 当時、国立がんセンター中央病院に在籍していた私はイレッサ開発の当事者ではなかったが、「副作用死はなぜ防げなかったか」を特集したNHKの報道対談番組に出演したことがあった。 もともと肺に病気のある状況であること、コントロールできない状況で多数の患者に使われたこと、などが原因という話はしたような気がする。
医療者の沈黙-オンコロジストの独り言(http://watanabetoru.net/2010/10/31/)
Yahoo!掲示板でnored22を名乗る自称医師(その正体はセカンドオピニオンWebサイトの主催者であるとの噂があるが真相は定かでない)は、かつて、次の様に証言していた。
残念ながら自由診療をうたう医療機関にてそうしたイレッサの適切でない投与があるようです。血管内治療をうたう横浜の某クリ二ック、あるいは横浜コンF病院、その他ぞろぞろあります。イレッサの適応外投与自体は悪いことではありません。しかしイレッサの副作用、作用機序、併用して良い薬悪い薬等を理解できていない医師がいくら患者の頼みでも拒絶するのが医師の最低倫理でしょう。
インチキ療法の使用数の実態がつかめないので仮定でしか言えないのだが、もしも、このような不心得な医師のせいで大量の副作用死が産まれたのであれば、その責任を国や製薬会社に押しつけるのは間違っている。
全ての医師が悪ではない
もちろん、適切な処置をしても助けられなかった患者は居るだろう。 適切な処置を行なって、それでも患者が死んだなら、医師の処置は悪くない。 患者の死を全て医師のせいにするのは間違っている。 イレッサの副作用死を全て医師のせいにするのは間違っている。
しかし、イレッサ薬害訴訟の原告の場合は違う。 原告の主治医は、添付文書を軽視し、リスクの説明もせず、経過観察を怠って患者を死なせたのである。 そんな素人以下の医師はイレッサに手を出してはいけなかったのである。
適切な処置が為された事例において、国や製薬会社を訴える遺族が居ないのは、医師が事前に適切なインフォームド・コンセントが行っているからだろう。 そして、ちゃんとインフォームド・コンセントができる医師は、本当の問題をちゃんと説明し、国や製薬会社を恨むのは筋違いだとも遺族を言い含めているだろう。 だから、その医師の患者の遺族は国や製薬会社を恨まない。 国や製薬会社を恨むくらいなら、医療改革に精を出した方がましだと分かっているのである。
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