イレッサ東京高裁判決速報
詳細は判決文を見ないと分からないが、報道などで判明している情報を元に解説する。 原告は不当判決と大騒ぎしそうだが、報道内容を見る限り概ね妥当な判決と思われる。
15日の2審の判決で、東京高等裁判所の園尾隆司裁判長は「イレッサの有効性は高く、副作用があるからといって薬として欠陥があるとは言えない」と指摘しました。
これは両地裁判決と変わらず。
園尾隆司裁判長は「承認時には、副作用と死亡との因果関係が不明確で、添付文書に記載された副作用の注意喚起に欠陥があったとはいえない」と述べた。
承認時に知り得た情報では、副作用死の可能性が漠然とした可能性である以上、これは妥当な判断だろう。
「重大な副作用」欄の記載については,日本製薬工業協会の自主基準において,「重篤度分類グレード3を参考に副作用名を記載する」
「重篤度分類グレード3」は,厚生省薬務局安全課長通知により,「重篤な副作用と考えられるもの,すなわち,患者の体質や発現時の状態等によっては,死亡又は日常生活に支障をきたす程度の永続的な機能不全に陥るおそれのあるもの」
東京判決第3分冊 - 薬害イレッサ弁護団
なので、漠然とした副作用死の可能性は伝えるなら重大な副作用欄に記載するのが相当である。
園尾裁判長は判決理由で、原告側が副作用として主張した間質性肺炎について「抗がん剤や抗リウマチ薬など多数の薬で発症する一般的副作用で、がん専門医らは間質性肺炎での死亡があり得ることを把握していた」と指摘。 添付文書に間質性肺炎の副作用についての警告欄がなかったことを「欠陥があったとは言えない」と判断した。 国の責任も「製造物に欠陥がなく前提事実がない」として認めなかった。
高裁判決は、副作用の危険性は説明書に書かれており、医師も危険性を認識していたことから、製造物責任法の「指示・警告上の欠陥」はなかったと判断してア社の責任を否定した。 さらに、ア社の責任を認めない以上、国の責任も認められないとした。
これは製造物責任法第2条第2項の「通常予見される使用形態」が「間質性肺炎での死亡があり得ることを把握していた」専門医による使用であると認定されたものと考えられる。 常識的に考えて妥当な判断だろう。
判決で園尾裁判長は「死因とイレッサの副作用との因果関係があるとまではいえない。警告欄がなく、副作用が致死的となりえるという記載がなくても、指示、警告上の欠陥があったということはできない」と指摘。 その上で、国に対する損害賠償請求は「ア社の製造物責任や不法行為責任があるとの主張を前提としており、その前提事実が認められない以上、理由がない」と述べ、国の責任を認めなかった。
記事を読むと、原告患者の死亡とイレッサの副作用との因果関係を否定したように見える。
もし、そうなら、
訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく
その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。
東大病院ルンバール事件最高裁判例
とする最高裁判例違反が疑われる。
他社の記事には、こうした記述が見られないことから、読売新聞の記事の「承認時には、副作用と死亡との因果関係が不明確」の意味を取り違えたのではないか。
イレッサ東京高裁判決文を見ると、やはり、誤報のようである。
4 イレッサ投与と本件患者らの死亡との因果関係
亡●●●●●及び亡●●●●,については,前記3(1)及び(3)認定の事実(9〜11,13〜15頁)に基づいて判断すれば,イレッサ投与と死亡との間の因果関係を肯認するのが相当であり,この認定を覆すに足りる証拠はない。
しかし,亡●●●●にはKL−6及びβ−Dグルカンが共に高値であるというニューモシスチス肺炎と整合する臨床検査値がある一方,この臨床検査値は間質性肺炎とは整合せず,さらに,病理検査(喀痰検査)により真菌の存在が確認されたこと及び同人の症状の経過を総合すれば,同人はニューモシスチス肺炎により死亡した蓋然性が最も高い一方,間質性肺炎で死亡したものと認めることはできず,同人の死亡とイレッサ投与との間に因果関係があるということはできないものというべきである(前記3(2)(11〜13頁))。 亡●●●●の死亡原因はゲフィチニブによる急性肺障害(間質性肺炎)であるとする甲個②2及び5の見解は,前記3(2)認定の事実に照らし採用することができない。
したがって,亡●●●●がイレッサの投与により死亡したことを前提とする第1審原告●●●●の請求は,その余の争点について判断するまでもなく理由がない。
薬害イレッサ東日本訴訟 東京高裁判決 - 薬害イレッサ弁護団(P.15,16)
東京高裁判決では、1名を除いて、原告患者の死亡とイレッサの副作用との因果関係を肯定している。
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